「にべ」とは
「にべ」は漢字で表記すると「鮸」「膠」「鰾膠」となります。一つひとつの漢字の意味を見てみましょう。
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鮸(にべ)…ニベ科の海水魚。全長約90センチメートル、背びれに切れ込みがあり、シログチに似る。身は白身でクセがなく、塩焼きなどで食べられる。日本の南方、中国近海などに生息する。
- 膠(にべ・にかわ)…動物の皮や骨を煮出して作った接着剤。
- 鰾膠(にべ・にべにかわ)…にべの鰾(うきぶくろ)から製する膠(にかわ)。また、鯉・鰻・サメなどの鰾(うきぶくろ)からも作られる。粘着力が強く、食用・薬用・工業用などで使われる。
「にべ」の意味
「鮸(にべ)」のうきぶくろを使って作られた「膠(にかわ)」は特に粘着力が強いことから、「膠」を「鰾膠(にべにかわ)」とも言い、その粘着性の強さが転じて人間関係の親密さを意味するようになりました。
現在、慣用句や熟語では「膠」もしくは「鰾膠」の漢字が多く使われているようですが、「膠」も「鰾膠」も、そもそもは「鮸」という魚のうきぶくろを煮出したものです。
慣用句や熟語に「にべ」が登場した際は、煮出された粘っこい物質が、物に対しても人に対しても強い粘着力を持ち、ぴったりくっつけると連想すれば、意味を理解しやすいでしょう。
「にべ」の慣用句
「にべ」は慣用句では基本的に否定表現で用いられます。よく知られているのは「膠も無い(にべもない)」ですね。「愛敬もない、思いやりもない、とりつきようがない」という意味です。
この「膠もない」を更に強調した表現に「膠もしゃしゃりも無い(にべもしゃしゃりもない)」という言い方があります。
しゃしゃりは「さっぱりしたところ」という意味で、粘り気もなければさっぱりしたところもない、つまり「味もそっけもない。ひどく無愛想である」という意味になります。
「にべ」の熟語
「膠」の熟語で馴染み深いものに「膠着(こうちゃく)」があります。物事の状況が固定されて、変化・進展しないことを「膠着状態に陥る」などと言いますね。膠着には更に「膠のように固くくっつく」という意味があります。
また、「膠漆(こうしつ)」という言葉は読んで字のごとく「にかわとうるし」です。膠で固定し漆で塗り固めることから転じて「互いにぴったり合って親密なこと」という意味があります。離れがたいような親密な関係を四字熟語で「膠漆之交(こうしつのまじわり)」と言います。