「余地」とは?意味や使い方をご紹介

「余地(よち)」という言葉は「弁解の余地はない」「疑問の余地はない」などと使うことが多い単語です。いくぶん固い言葉なので、日常会話の中で使うことはあまり多くないかもしれません。ここではこの「余地」という言葉を意味や使い方を解説しつつ掘り下げていきます。

目次

  1. 「余地」のおおもとの意味は?
  2. 時間的・精神的余裕としての「余地」
  3. 「立錐の余地もない」
  4. 「弁解の余地がない」は「弁解の余裕がない」?
  5. 「余地」は概念的な空間

「余地」のおおもとの意味は?

「余地」の意味は、まさにその漢字が表しています。「余っている地」、つまり「余地」とは、空いているスペースやゆとりのことなのです

(使用例①)

  • もう本棚がいっぱいで、買ってきた本をしまう余地がない。

具体的な空間を意味することは少ない

ただし、具体的な空間を表す場合には、「余地」を使うよりも、「余裕」「ゆとり」「空白」「余白」「空き」「スペース」「隙間」といった、他の類語を用いる場合の方が多く見られます

たとえば、「そちらの余地にこの机を移そう」とか「書類の余地にメモを書き込む」といった言い回しよりも、「そちらのスペースにこの机を移そう」「書類の余白にメモを書き込む」といった言い回しにする方が多いでしょう。

時間的・精神的余裕としての「余地」

「余地」には、空間的な余裕のほか、時間的、あるいは精神的な余裕の意味もあります。たとえば、事が差しせまっていて、のんびりと話し合っていられないときなどに「もう議論の余地はない。計画の実行を急ごう」などと使うわけです。

この「議論の余地」の「余地」は、時間的なゆとりとも解釈できるし、精神的なゆとりと解釈することもできるでしょう。あるいは、そのどちらをもカバーしていると解釈することも可能です。

(使用例②)

  • 期限まで、もう少し議論する余地がある。
  • 関係者が多いので、一人一人の意見を聞いている余地はない。

「立錐の余地もない」

ところで、「余地」を使った慣用句として、「立錐(りっすい)の余地もない」というものがあります。これは、大変混雑し密集している様を表します

「錐」というのは工具の「きり」のことで、それを立てることが「立錐」という言葉の意味です。つまり、「立錐の余地もない」とは、文字通りに言えば「きりを立てるほどの場所もない」ということ。そこから、それほどまでに混みあっているという意味になるのです。

この「立錐の余地」の「余地」は空間的な意味で使われていますね。ただ、これはあくまで一つの比喩であり、文字通り「きりを立てるほどの場所」のことを言っているのではありません。その点で、この場合の「余地」は具体的な空間を示しているわけではないのです。

「弁解の余地がない」は「弁解の余裕がない」?

他に「余地」が使われる例として、何か悪いことをした人が謝罪する場面や、あるいはそんな人を責め立てる場面で「弁解の余地がない」という言い回しが出ることがあります。これは「弁解のしようがない」という意味で使われる表現です

ここまで「余地」を空間的・時間的・精神的な余裕を意味するとお伝えしましたが、この解釈だと「弁解の余地がない」は「弁解するだけの(精神的、あるいは時間的な)余裕がない」という意味になってしまいます。

これでは、心から反省していない人の負け惜しみのようにも見えてきて、謝罪する側が用いる表現としてはふさわしくないような感じがしてしまいますね。

でも、「弁解の余地がない」はもちろん謝罪のために使える表現です。この場合の「余地がない」というのは、「弁解の余裕がない」という意味ではなく、言わば論理的な隙間がない、理屈の上での隙がないということを意味していると考えるべきでしょう

このように考えれば、「自分が100パーセント悪いため、言い逃れしたり自分を正当化したりできる部分が少しもない」という自分の過失や罪を完全に認める姿勢を表明する言い回しになり、誠意のこもった謝罪表現として受け取れますね。

「余地」は概念的な空間

このほか、「疑問の余地がある/ない」という言い回しもありますが、この場合の「余地」も論理的なものを表していると言えるでしょう。与えられた説明や主張の中に、疑問をさしはさむための隙があるかどうかを表す言い回しになるわけです。

以上のように、「余地」は物理的な空間や時間的・精神的余裕以外に、論理的な意味での隙も意味するのです。先ほど、「余地」には具体的な空間を意味する場合が少ないと述べましたが、具体的な空間というより、概念的な空間というイメージでとらえた方が良い言葉なのかもしれません。


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