「知行」の意味
古来日本の「知行」
知行という言葉には主に2つの意味があります。まずは、日本の平安時代から江戸時代にかけて用いられていた「知行」です。この場合には「ちぎょう」と読み、職務を執行することや土地を支配することを主に意味し、中世から近世にかけては上位者から与えられた職や領を支配することを意味していました。
知行合一の「知行」
知行と聞いて思い浮かべるのはこちらの方が多いのではないでしょうか。知行合一の知行はこの場合、「ちこう」と読み、「知ることと行うこと」つまり「知識と行為」を意味指します。知識の「知」と行為の「行」を一語にしたのが、この知行なのです。
古来の「知行」の意味の変化
この意味での「知行」は古代末期から用いられ、事務や職務を執行することという意味を表していました。そして中世には職務と権益を自分のものにするという行為もしくは状態を言うようになり、荘園支配に対して言われるようになります。
近世になると主君が家臣に与える封地を示すようになり、「事務や職務を執行すること」という当初の意味はどんどん派生して、土地自体を指すようになりました。江戸時代には、将軍や大名が知行宛行状を発給してその土地が家臣の知行であることを証明しました。
「知行合一」の意味
そもそも知行合一とは、中国は明時代の王陽明が唱えた説のこと。知ることと行うことはともに心の本質(良知)から発するから、本来は一つのものであるという考え。知ることは行為のはじめであり、行為は知ることの結果であるということです。
つまり知ることは行為を生み出すもとであり、行うことをしなければ、本当に知っているということにはならないのです。これを「知行合一」と王陽明は呼んだのです。
「知行」を使った単語
古来の「知行」
古来より用いられていたこの「知行」は、前記の通り「職務の執行」や「土地支配」という意味を示します。日本で用いられていた言葉としては、皇族や公卿、寺社に国務執行権を与えてその国の収益を得させる制度である「知行国」や、その知行の石高である「知行高」があります。
また、知行を受けほどの才能や功績がないのに徒に知行を受ける人物を罵っていう「知行盗人」などのややマイナスイメージの単語も存在します。一方、他人の支配を交えずに完全なる所領を支配したときには「一円領知」という言葉を用います。
知識と行為の「知行」
前記した通りこの意味での知行は「知行合一」という言葉の中で用いることが一番多いといえます。しかし日常生活の中ではあまり出てこない単語。ただ、下記のようにあの有名な勝海舟が記した本の中に、この知行合一という言葉が出てきます。
勝海舟・氷川清話
「知行合一」の類語・対義語
類語
「知行合一」の類義語には、「口八丁手八丁」という「話すこともすることも達者なこと」を表す言葉が当てはまります。「八丁」とは八つの道具を使いこなすという意味で、物事が巧みなさまを表します。
対義語
対義語には、「先知後行」という言葉が存在します。この言葉の意味は「知ることと行うことには順序があり、知ることが先で行うことが後だ。しかし、行うことの方が重要である」というものですので、知と行は切り離してはいけないとする「知行合一」には反するのです。