「一矢」の意味
「一矢(いっし)」は文字通り「一本の矢」を意味します。「矢」という漢字は、矢じり、やはず、羽根の形を象って、一本の矢を表現しています。
「一矢」の用例
一本の矢を放つことを文字通り「一矢を放つ(いっしをはなつ)」と表現しますが、一方で、相手に突き刺さるような鋭い言葉を放つことも、矢を放つことになぞらえて同様に「一矢を放つ」と表現されます。
【矢を放つ】
吉川英治『三国志(四)』より
【言葉を放つ】
太宰治『太宰治全集4』「恥」より
「一矢」の慣用句
「一矢」は慣用句にも使われており、代表的なものが「一矢報いる(いっしむくいる)」です。「一矢を報いる」とも言い、意味は「相手から受けた攻撃・非難に対して、わずかであっても反撃・反論をする」ことです。
- 3-0で負けていたが、最後に何とか一点を返し、一矢報いた。
- 敵わないと分かっているが、父の仇に、どうにか一矢報いたい。
- 正論で彼に一矢報いる。
しかし、例えば戦車に弓矢で挑んで一筋の矢傷を負わせるように、「一矢報いる」は勝つ可能性が無くても諦めずに抵抗し、わずかでも相手に反撃を試みる強い気持ちを表す言葉だと言えるでしょう。
同じ意味の慣用句に「一太刀浴びせる」、また不意をついて相手を驚かせるという意味で「一泡吹かせる」という言葉もあります。いずれも自分より強い相手に挑む際に使われる言葉です。