「胡乱」とは?意味や使い方をご紹介

「胡乱(うろん)」は、「正体が怪しく疑わしい者やそのさま」を表す言葉です。現代では、歴史小説や時代劇でもないと、なかなか聞く機会のない言葉かもしれません。ここでは、「胡乱」の意味や用法とともに、「胡」という漢字にまつわるエピソードを紹介します。

目次

  1. 「胡乱」の意味
  2. 「胡乱」の用法
  3. 「うろんの母」
  4. 「胡乱」の語源
  5. 「胡人」とは
  6. 日本における「胡」
  7. 本当に「胡乱」なのは誰か

「胡乱」の意味

「胡乱」とは、「正体が怪しく疑わしいこと、またその様子」を意味します。特に人間に対して、その正体が確かでない。言動が真実かどうか疑わしい。うさんくさい。といった時に使います。また、上記の意味から転じて、記憶や動機が確かでないことや、文章や文字が乱雑な様子なども意味します。

「胡乱」の用法

胡乱な

「胡乱な奴め」といった用法は、時代劇などで時々耳にする用法かもしれません。これは「怪しい奴め」や「うさんくさい奴め」と言うのとほぼ同義になります。またそうした人間を指して、「胡乱者」と言う用法もあります。

胡乱げ

「胡乱げな表情」と言えば、曖昧で、何を考えているかわからない、腹に一物隠していそうな表情ということになります。

また「胡乱げな記憶」などといえば、記憶が定かでない、とっちらかっていてよく思い出せないということになります。

胡乱座

「胡乱座」は仏教の用語で、禅宗の法会(ほうえ)において、僧が地位の上下にかかわらず入り乱れて着席することを言います。

「胡散」臭い

「うさんくさい」は漢字で、「胡散臭い」と書きます。これは中国に由来のない和製漢字ですが、字面を見るかぎり、「胡乱」と同じ様な意味と推測できそうです。

「うろんの母」

石田スイによるマンガ作品「東京喰種(トーキョーグール):re」には、「うろんの母」という怪物が登場します。このマンガを読んだことがある人なら、その正体とともに、何とも形容しがたい、怪しく恐ろしいその風貌が印象に残っていることでしょう。

「胡乱」の語源

漢字の生まれ故郷である中国では、「胡」と言えば、主に西方・北方の異民族を指しました。

「胡」=あごひげ

「胡」の大元の字源はというと「ひげ」、特に垂れ下がった顎髭のことを指しました。中国の西方・北方の辺境(今でいうモンゴル・チベットのあたり)に住んでいた遊牧民族にはあごひげの長いものが多く、そこから転じて「胡人」と呼ばれるようになりました。

「胡人」とは

中国の歴史上における「元」が、モンゴル系の王朝であったことはよく知られていますが、「胡人」は古代からたびたび中国(中原)の平和を脅かす存在でした。「胡乱」という言葉は、「胡人が起こした乱の際、中国の住民が慌てふためいて逃れた」ところから生じた、という説があります。

また、「胡人」といえば、かつてはモンゴル系の異民族をさすのが一般的でしたが、時代が下ると民族の中でも特に(きょうど)を指すようになり、またシルクロードの交通路が発達するとペルシャ系民族(西胡)のことを指すようになりました。

「胡人」の影響

中国(中原)では古くからこうした異民族との交流があり、恐れたり、蔑んだりするとともに、影響を受けたり、文化的に憧れを抱く対象でもありました。その影響は、漢字の中にも残っています。

例えば、「胡弓(二胡)」のような楽器、「胡(旋)舞」のような踊り、「胡床(こしょう)」のような家具がそうです。「胡瓜(きゅうり)」や「胡椒(こしょう)」はインド原産、「胡麻(ごま)」はアフリカ原産と言われていますから、これらもシルクロードを通じて中国にもたらされたものと思われます。

日本における「胡」

そうした人や品物は、日本にも到来しています。奈良・正倉院の宝物殿には、インドやペルシャから伝わった宝物が収蔵されていますし、かつて平城京の時代には、ペルシャ人の役人がいたことがわかっています。遠い遠い西方から、海を渡ってもたらされた品々は、中国人以上に日本人を魅了したのかもしれません。

「胡」=えびす

さて一方で「胡」は「えびす」とも読みます。この「えびす」は、「えみし」の音変化で、「エゾ」と同じ意味となります。これは漢字で「蝦夷」と書き、都から遠く離れた未開の土地やそこに住む人のことを指しました。

かつて、日本の北海道や東北地方には「アイヌ民族」に代表される朝廷には与しない民族が大勢住んでいました。そのためこれらの土地は、野蛮な土地、つまり「蝦夷地(エゾち)」と呼ばれていたのです。

本当に「胡乱」なのは誰か

アイヌが登場するマンガといえば、手塚治虫の『シュマリ』や、最近話題になった作品では野田サトルの『ゴールデンカムイ』などがあります。これらの作品や、アイヌ文化に触れた経験のある方なら既にご存知のことでしょうが、「えびす」たちは、時代の流れとともに日本の北へ、東へと追いやられていきました。

もしかすると彼ら「えびす」にとっては、西方から来て、自分たちの土地や生活を奪っていった本土の人々の方が野蛮で「胡乱な奴ら」と見えていたのかもしれません。

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