「釣瓶落とし」とは?意味や使い方をご紹介

秋になると、「秋の日は釣瓶落としだね」という表現をよく聞きますよね。聞きなれない「釣瓶」という言葉は何を意味するのでしょうか。そして、なぜ秋の日没のことを「釣瓶落とし」と例えるのでしょうか。今回は、「釣瓶落とし」の意味や使い方をご紹介します。

目次

  1. 「釣瓶」とは?
  2. 「釣瓶落とし」とは
  3. 妖怪「釣瓶落とし」
  4. 俳句の季語「釣瓶落とし」
  5. 「釣瓶落とし」の用法

「釣瓶」とは?

釣瓶(つるべ)」とは、井戸の水を汲むための容器(桶)のことです。縄や竿を使って木桶を引き上げる光景は、時代劇などでご覧になったことがあるのではないでしょうか。

現在では見かける機会の少なくなった井戸ですが、かつては生活用水として毎日のように利用されていました。

一般的に井戸の深さは7~10m程度もあります。これだけ深いと、人が降りて水を汲むわけにはいきません。そこで、投げ入れた桶を水で満たし、手元まで引き上げるのに考案されたのが「釣瓶」でした。

「釣瓶」の仕組みとして代表的なのが、縄でつないだ桶を滑車を使って引き上げるもの。これとは別に、竹竿の先に固定した桶を「てこの原理」で持ち上げるタイプを「跳ね釣瓶」といい、釣瓶を設置した井戸は、総称して「釣瓶井戸」と呼ばれます。

「釣瓶落とし」とは

今回のテーマ「釣瓶落とし」は、上記の「釣瓶」から生まれた慣用表現です。井戸の中へ勢いよく落ちていく桶の様子になぞらえ、秋の夕暮れの太陽があっという間に沈むさまを表したのが「釣瓶落とし」です。

夏は昼間が長く、冬は夜間が長いことはご存じでしょう。じつは日の出・日の入りの時刻は、規則立って変化していくわけではありません。春頃の日の出の時間の早まり方と、秋頃の日の入りの時間の早まり方は、他の季節に比べて著しいのです。

1ヶ月ごとの具体的な時刻でみていくと、日没に関しては1月~7月の6ヶ月間に約2時間の変化が生じる一方で、8月から11月の4ヶ月間で約2時間の変化が生じています。つまり、秋頃の日没時間の変動は、他の季節にくらべて急速ということです。

また、日没後にも周囲が明るい時間帯のことを「薄明」といいますが、6月・7月の薄明が約2時間続くのに対して、秋以降の薄明は1時間半ほどに縮まるため、「日の入り後にあたりがすっかり暗くなってしまう時間が早くなった」と感じやすいのです。

妖怪「釣瓶落とし」

水木しげるの漫画でもおなじみの妖怪「釣瓶落とし」。初めて紹介されたのは江戸時代の怪談集といわれています。

山岡元隣という人が書いた『古今百物語評判』に、「釣瓶おろし」という名の妖怪が掲載されているのです。巨大な生首のような妖怪が木の上から落ちてきて人を襲ったり、人を食べてしまうという内容です。

「釣瓶おろし」の伝承は、主に近畿地方や東海地方を中心に伝わっていますが、このように頭上から突然落ちてくる妖怪は、地域によって「釣瓶落とし」「鍋下ろし」など、さまざまな名前で呼ばれています。

この勢いよく落ちてくるさまを表した名前は、現在使われている慣用表現「釣瓶落とし」と同じ意味合いと捉えてよいでしょう。

俳句の季語「釣瓶落とし」

俳句の世界では、「釣瓶落とし」は、秋の季語として用いられています。

  • 釣瓶落しといへど光芒しづかなり(水原秋桜子)
  • 時計塔鳴り出で釣瓶落しかな(和田敏子)
  • 大山に釣瓶落としの雲ふたすぢ(米谷静二)

「釣瓶落とし」の用法

「釣瓶落とし」は、「秋の日は釣瓶落とし」のように、使用する状況が限定された言いまわしです。もちろん冬の日没も「釣瓶落とし」ですが、冬にこの表現は聞きません。

いつのまにか驚くほど日が短くなった秋の夕暮れ。夏が過ぎ去ったことも実感させる、いかにも日本らしい風流な表現ではないでしょうか。


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