「こだま」の意味
「こだま」とは、山などで「ヤッホー」などと叫ぶと、発した音が少し遅れて返ってくる現象のことです。
屋外の広い場所で、山や大きな崖など、音を発する方向にかなり大きな斜面や壁があるときに起こりやすい現象です。このことから、音が反響して聞こえることを「こだまする」「こだました」などと表現します。
「こだま」の使い方
- この峠で「ヤッホー」と叫ぶと、こだまが聞こえる
- 女性のハイヒールの音がこだました。
「こだま」という言葉の由来とその意味
「こだま」は漢字で「木霊」と書きます。世界の多くの民族は「木には精霊が宿っている」と信じ、木の精霊が「こだま」という現象を起こすのだと考えていました。
日本も例外ではなく、「木霊」のほかにも「山彦(やまびこ)」「山鳴り」などと表現したり、「山の神」や「天狗」が人の声を真似をするのだと考えていました。
英語では、こだまのことを「echo」(エコー)と呼びます。エコーは、ギリシャ神話に登場する木の精霊で、月の女神アルテミスに仕えるニンフでした。おしゃべりだったエコーは、ゼウスの妻ヘラの怒りを買い、相手の声を繰り返すことしかできなくさせられてしまいました。
物理学が発展していなかった時代の人々にとって、「こだま」は説明することのできない不思議な現象でした。そのため、「自分の声を聞いた木の精霊などによって真似されるからだ」と意味づけて、信じていたのです。
「こだま」はなぜ起こるのか
音源から発信された音は、空気を振動させ、音波として周りへ広がり伝わっていきます。この時に、音波が進む方向に大きな壁があると、音波は壁で跳ね返り、進む方向を変えます。
音の進む速さ(音速)は、1秒間に340mです。山の斜面や崖など、こだまが起きるような場所はかなり広い空間のため、音波が斜面にぶつかって自分の所へ戻ってくる(聞こえる)までに1~2秒かかります。そのため、「自分の発した声が、少し遅れて向こうから聞こえてくる」ように感じられるのです。
「こだま」と似ている現象
残響
こだまが起こる場所は、かなり広い屋外の空間です。これに対して、風呂場やコンサートホール、団地のように大きな建物と建物の間などは、壁で囲まれた狭い空間になっています。
そのため、発した音は壁と壁の間ですぐに跳ね返ってきます。この時、発した音がほんのわずかに遅れて聞こえたり、音波が壁に繰り返しぶつかるために、音が響いて聞こえる現象を「残響」といいます。
鳴龍
寺や神社などの堂内で手を叩くと特有の残響が聞こえるものを「鳴龍(なきりゅう)」と呼びます。
これは、壁に囲まれた狭い空間で手を叩いた時に、その残響が重なり合うことで特有の音が聞こえる現象です。英語では「flutter echo(フラッターエコー)」と呼んでいます。
エコー検査
医療現場で使われている「超音波検査」は、「エコー検査」とも呼ばれます。この検査では、人には聴くことのできない高い周波数の音波(超音波)を発する機械を使います。
機械を検査したい場所へ向けて当てたときに、超音波が検査対象から跳ね返る時間差を捉えて画像化する技術が用いられています。