「格子模様」とは
「格子模様(こうしもよう)」とは、「筋を縦横に組み合わせた縞模様」のこと。織物でよく使われる模様なので、縦線と横線が直角に交差したものを指すことが多いです。
織物では、一般に先染めした経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織り出して形成しますが、プリントした生地もあります。英語では「grid pattern」や「check」と表記されます。
「格子模様」の種類
「市松模様」
「市松模様」は、チェス盤のように色違いの正方形(または長方形)を交互に並べた模様で、格子模様の一種です。英語では「checkerd pattern」といいます。
日本では従来「石畳」と呼ばれていましたが、江戸時代中期になって「佐野川市松」という歌舞伎役者がこの模様の衣装を着たところ、当時の女性の間で大流行。それ以降「市松模様」と呼ばれることが多くなりました。「元禄格子」とも呼ばれます。
「市松模様」は、柄が途切れずに続いていくことから「繁栄」の意味が込められ、縁起の良い模様として好まれています。2020年東京オリンピック、パラリンピックのエンブレムに採用された市松模様は3つの四角形が組み合わせてあり、多くの文化や国が交わり広がることによる「多様性」を表現しています。
「ギンガム・チェック」
「ギンガム・チェック(gingham check)」は、白ともう1色で構成された、 経緯(たてよこ)同じ幅の縞で組み合わされた格子模様のこと。
ギンガムの由来は、マレー語で縞模様を意味するGenggnagという説や、インド原産の先染めの平織物をフランスのギャンガン(Guingamp)にて初めて生産したからという説などがあります。
「シェパード・チェック」
「シェパード・チェック(shepherd check)」は、「ギンガム・チェック」と同様、白ともう1色の同じ幅の縞を経緯に組み合わせた格子柄ですが、色が交差していない部分に地の白が斜めの線として現れているのが特徴です。
スコットランドの羊飼いがこの柄を着用したのが名前の由来。「小弁慶格子」とも呼ばれます。
「シェパード・チェック/小弁慶格子」の経緯の縞の幅が広いものを「弁慶格子(べんけいごうし)」、「弁慶縞(べんけいじま)」といいます。男らしい柄という意味から「弁慶」の名がつきました。一般に白ともう1色で構成されますが、茶と紺の2色づかいを「茶弁慶」、紺と浅葱の2色づかいを「藍弁慶」といいます。
「タータン・チェック」
「タータン」は、多色の糸を様々な幅の縞で綾織りにした格子模様の織物のこと。この格子模様も「タータン」と呼ばれていますが、日本では「タータン・チェック(tartan check)」と呼ばれています。
スコットランドの、特にハイランド地方に伝わる伝統的な格子模様で、民族衣装のキルトにはこの「タータン・チェック」が用いられています。
氏族を表す「クラン・タータン」、地域に関係した「ディストリクト・タータン」、王族を表す「ロイヤル・タータン」などがあり、色使いや縞の組み合わせ方によって細分化され、家系や出身地や身分を表します。「ブラックウォッチ・タータン」は、軍隊で用いられた「ミリタリー・タータン」の一種です。
また「バーバリー」「アクアスキュータム」などの英国トラッドスタイルブランドが固有の商法として開発した格子柄を「ハウスチェック」と総称しますが、これはスコットランド伝統の「タータン・チェック」とは異なります。
「マドラス・チェック」
「マドラス・チェック(madras check)」は、インドのマドラス地方(現・チェンナイ)で作られた綿織物に用いられたことに由来する格子模様です。縞の織り出し方は「タータン・チェック」と似ていますが、主に明るめの多色の糸を使っているのが特徴です。
「千鳥格子」
「千鳥格子(ちどりごうし)」とは、主に黒と白で構成される格子模様の一種で、たくさんの鳥が飛んでいるように見えることからこの名前で呼ばれています。
日本では鳥に見えるこの柄は、英国では猟犬の歯に見えることから「ハウンド・トゥース・チェック(houndstooth grid)」と呼ばれています。
ウィンドウ・ペン
「ウィンドペン/ウインドペーン(windowpane)」とは、単色の細い縞で窓の格子のような四角形を構成する格子模様のこと。
日本でも、窓や戸につける建具(格子)に由来して、「格子縞(こうしじま)」や「窓枠格子」と呼ばれています。後にご紹介する「グラフ・チェック」とほぼ同じです。
「グラフ・チェック」
「グラフ・チェック(graph check)」とは、方眼紙のように細い線で構成されている格子模様のことで、「ライン・チェック(line check)」とも呼ばれています。
構成は「ウィンドウ・ペン」とほぼ同じですが、格子が正方形のものを特に「グラフ・チェック」と言います。日本では「碁盤格子(ごばんごうし)」とも呼ばれています。
「グレン・チェック」
「グレン・チェック(glen check)」は、大きさの違う千鳥格子とヘアラインストライプを組み合わせた格子模様のことで、発祥はスコットランド。名前の由来は、グレナカート家を表す格子模様だったという説と、アーカートという峡谷(グレン)で織られたからという説があります。
「格子模様」まとめ
縦縞と横縞を組み合わせるだけの「格子模様」ですが、世界中には様々な格子模様があり、種々のデザインの工夫が盛り込まれています。身近な模様だからこそ、昔から大切に受け継がれてきたのでしょう。
この機会に、ご自分の洋服やご自宅のファブリックの「格子模様」を見直してみるのも面白いかもしれませんね。