餞別ってどういう意味?
昔の人々にとって地元を離れるのは大変なことで危険がつきものでした。現在のように道中の安全が確保されておらず、交通も発達していなかったからです。そんな時代においてのっぴきならない理由で身内や友人が地元を離れなければならないとき、残される人は旅立つ人の無事を祈り金品を贈りました。この贈与のことを餞別といいます。
また餞別の餞は「馬の鼻向け」という言葉に由来し、移動に徒歩や馬を使用していた当時は旅人が道中で迷うことなく安全にたどり着けるよう、乗馬の鼻を目的地に向ける習慣がありました。これが「馬の鼻向け」です。
現在はどんなときに餞別を贈るの?
旅人の時代が過ぎて戦時中になると、今度は徴兵された身内や恋人に餞別が贈られました。彼らは大切な人に二度と会えなくなることを覚悟しながら、餞別とともに送り出したのです。
このように餞別とは本来、もう会うことがないであろう相手に贈るのものでした。そんな悲痛な背景があったため、現在でもむやみに餞別と称するのは相手に不快感を与えてしまいます。
おおまかには退職、旅行、留学、引っ越しなどをする人に激励と今までの感謝をこめて贈る金品を餞別と呼び、祝いの席や日常的にやりとりされる贈り物とは区別されます。
どんな物を贈ればいいの?
餞別の贈り物として一般的なのは、現金や商品券です。退職や引っ越しをする人の健康と新天地で活躍することを願い、これらのものを贈ることが多いようです。現金に抵抗がある方は商品券などの間接的なものを選んでみてはいかがでしょうか。もちろん相手によってはほかの物でもかまいません。引っ越しなら新居で使えそうな家具や小物なども喜ばれるでしょう。
目上の人に餞別を贈るときの注意点とマナー
餞別は一般的に金品が好ましいですが、気をつけていただきたいことがあります。
それは上司など目上の人に餞別を贈るときです。目上の人に現金を贈ることはマナー違反にあたることがあるので、基本的には商品券もしくはカタログギフトなどが無難です。まわりの人と相談するのもよいでしょう。
どうしても現金を贈りたい場合は、お世話になった程度にもよりますが5000円~20000円が相場のようです。あまり高すぎる金額は相手が恐縮してしまったり失礼にあたるので注意しましょう。現金や商品券はのし袋に入れ、「お餞別」と表書きし、何に対しての餞別かを記載することがマナーです。
餞別のお返し
餞別にお返しは必要はありません。ですが何か形としてお礼をしたいというときは、引っ越し先や旅行先などのお土産や保存のきく食べ物をお礼としてお返しするのがよいでしょう。丁寧に梱包し、簡単な近況報告を兼ねた手紙を添えるとさらに喜ばれそうです。
お返しは金品にこだわらなくてもよいので選べる幅が広がります。通販サイトにも餞別のお返しに適した商品がたくさんあり、迷ったときにはその中から選んでみるのもよいでしょう。距離があって直接渡すのが難しい場合は、宅配を利用しても問題ありません。この場合も商品と一緒に手紙を添えるのが好ましいです。
現在の餞別事情
現在は昔と違い旅先での危険は少なくなったため、餞別という習慣もそれほど悲観的な意味を持たなくなりました。また安全や健康を願うだけでなくお祝いの気持ちも含まれるようになるなど、昔と現在では餞別を贈る場面や意味合いも変わってきています。
たとえば就職し地元を離れる友人に贈る餞別には就職を祝う気持ちが含まれていたり、結婚を機に引っ越す同僚に贈る餞別には円満な家庭を願う気持ちが含まれていたりします。
このように現在も餞別という習慣は残っているものの、昔よりも多岐にわたる場面で行われ、その都度含まれる意味も細分化しています。何気ない習慣ですが、本来は去り行く人への祈りと断腸の想いがこめられた儀式だったことを考え、昔の人々の生活や時代背景に思い馳せるのもいいかもしれません。