「負け犬の遠吠え」とは?
「負け犬の遠吠え」は、「まけいぬのとおぼえ」と読みます。勝負に負けた人、弱い人が、勝った相手の前では強く出たり悪口を言ったりすることができないのに、陰でこそこそとそのような行動をすることを言うことわざです。弱い犬が、強い犬から遠く離れたところから、びくびくしながら吠えることからこのように言われ、主に勝ち目のない相手に対して陰で悪態をつくようすを指します。
「負け犬」とは、けんかに負けて逃げる犬のことで、転じて勝負に負けた人間のことも指します。「遠吠え」は、犬や狼など、動物が遠くのほうで長く吠えることです。
「負け犬の遠吠え」類語
犬の遠吠え
臆病な人が陰でこそこそ威張ったり、陰口を言ったりすることです。「負け犬の遠吠え」は、「勝負に負けた人」について使うニュアンスが強いですが、「犬の遠吠え」は勝ち負けに関係はありません。したがって、「負け犬の遠吠え」と類語ではあるけれど、全く同じ意味の言葉ではありません。
ごまめの歯ぎしり
「ごまめ」は、カタクチイワシの稚魚を干したもので、力のないもののたとえです。大したことのない人、取るに足りない人がいたずらに悔しがること、またそれが無駄であるということを指しています。
引かれ者の小唄
「ひかれもののこうた」と読みます。「引かれ者」は、犯罪を犯して捕らえられ、処刑場へ連れていかれた者のことを言います。江戸時代、罪人が馬で刑場まで引かれていったところから来ています。
この「引かれ者」が、内心はビクビクしているにもかかわらず平気なふりをして小唄を歌う、ということが由来になっており、失敗したのに負け惜しみを言ったり、どうにもならない状態なのに強がったりしているようすを指します。「引かれ者の鼻歌(ひかれもののはなうた)」は同じ意味です。
「負け犬の遠吠え」の英語での表現
- loser’s whining(負け犬の遠吠え)
- loser’s howling(負け犬の遠吠え)
- cry sour grapes(負け惜しみを言う)
- Losers have bigger mouths.(負け犬が大きな口をたたく。)
- A barking dog seldom bites.(吠える犬はめったに噛みつかない。)
酒井順子による『負け犬の遠吠え』
『負け犬の遠吠え』は、2003年に発表された酒井順子さんのエッセイのタイトルで、講談社から発行されました。著者の酒井順子さんは1966年生まれで、男女雇用機会均等法施行の3年後の1989年に総合職として博報堂に入社、3年後に退社し、フリーランスのライターとして活躍しています。
どんなに美人で仕事ができても、「30歳以上、未婚、子なし」の3つの条件がそろった女性は負け犬である、として、このレッテルに甘んじていたほうが世間をうまくわたっていける、と、逆説的な応援で未婚女性の処世術を説きました。
結婚・子育てが女性の幸せであるとする価値観が根強い中、その価値観に縛られないで仕事に力を注ぐ女性も増えており、そのような女性たちが自分たちを「負け犬」と呼ぶようになったことで、この言葉は社会現象にもなりました。
『負け犬の遠吠え』は、2004年に講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞し、ベストセラーにもなっています。また、「負け犬」という言葉は、2004年の「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに選ばれています。