「パワーワード」概要
「パワーワード」は、「力」を表す「パワー」と「言葉」を表す「ワード」が組み合わさった合成語です。その成り立ちの通り、「力を持つ言葉」「力を秘めた言葉」という意味を持つ言葉と捉えられ、「パワーワード」と目された言葉は、自分を鼓舞したり相手に訴えかけたりする力を持つものとして、自己啓発セミナーやビジネスの現場などで用いられてきました。
2010年代から、ツイッターを中心に、意味そのものに関わらず「印象に残る言葉」「インパクトのある言葉」という意味での使い方が広がりを見せ、2018年現在では、その使い方が主流となっています。
「今年の新語」に選ばれた「パワーワード」
辞書の大手出版社である三省堂が毎年開催している「今年の新語」。その年に「よく見た」「よく聞いた」と感じた言葉を一般から募り、辞書編纂の専門家たちによってベスト10が選考されるというものです。「パワーワード」は、2017年の「今年の新語」で第3位に入選しました。
「今年の新語2017」のサイトでは、
①説得力のある ことば。
②表現が異様で、強烈(キョウレツ)な印象のある ことば。
パワワ〔俗〕。〔2010年代に広まった用法〕
《参考》
三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2017」Webサイト
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/topic/shingo2017/index.html
「パワーワード」の語源と、使われ方の移り変わり
「力を持つ言葉」として
「力」と「言葉」という、ともに一般的な単語の組み合わせなので、いつから使われ始めていてもおかしくはなく、はっきりした語源を探ることは困難です。
比較的古い例では、1974年に制作された、世界初のテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に登場しています。ゲーム中では「パワー・ワード・キル」「パワー・ワード・スタン」などのように、呪文の一部として用いられており、「パワーワード」という言葉そのものが「力を持つ言葉」という認識で使われています。
しかし、日常会話では、力やインパクトのある言葉を指したりまとめたりする「概念」としての使い方が主流になっており、「パワーワード」という言葉そのものが会話に登場することはあまりありません。
自己啓発やビジネスの方面では、自分を鼓舞したり相手への影響力を高めるための効果を期待して、人の心や行動を良い方向に導く言葉が「パワーワード」として使われています。先人の名言などはその代表例です。
インパクトや勢い重視に
「パワーワード」の「力」がその言葉の持つ意味ではなく、勢いやインパクト中心の使われ方が広まってきたのは2012年頃から。そのきっかけとなったのは、当時ツイッターで連載され始めていたサイバーパンク小説『ニンジャスレイヤー』であるとされています。
黄色のニンジャが怒声を張り上げた。「アイエエエー!」ニッキキ役員はニンジャに古のパワーワードであるニンジャスラングで凄まれ、役員のプライドを砕かれて失禁!「ドーモ、ヤナマンチの忠実なニンジャ、サンドウルフだ」黄色のニンジャは腕組みして一座を見渡した。 10
— Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー (@NJSLYR) March 18, 2012
このツイートが広まった後、『ニンジャスレイヤー』のファンを中心に「ネタになる言葉」としての使い方が広がりを見せ始めます。さらに、その流れの中で、「とにかくインパクトのある言葉」「強烈な印象を抱いた言葉」という意味合いで使われることが主流となっていきました。
ただし、「強いインパクトを受けた」「印象に残った」という感覚は個人の主観に寄るところが大きいため、ネット上でまとめサイトなどに挙げられているパワーワードは、一般的なものではなく、発信した人が強い印象を受けたというネタ的なものが多くなる傾向にあります。
まとめ
「パワーワード」は、「力」と「言葉」というざっくりした意味合いの言葉から成っているので、その使われ方もとても幅広いものになっています。大きく分けて、自己啓発・ビジネス方面ではその言葉の持つ意味や影響力を活かす方向、ネットスラングではインパクトや勢いを楽しむ形で使われていると言えるでしょう。
「力」を持つ言葉であれば、その詳細や方向は問われませんから、呪詛や攻撃性の高いネガティブな意味を持つ言葉であっても、勢いやインパクトがあれば「パワーワード」として扱われることになります。プラス面にもマイナス面にもその「力」を発揮しうる「パワーワード」。いい意味・楽しい印象を持つ「パワーワード」に効果的に触れて、日々を豊かなものにしていきたいですね。