「魂胆」とは
「魂胆(こんたん)」とは、「心中に持っている企(たくら)み」「よくない意図」という意味の言葉です。そもそも、「企む」には「よくないことを計画する」という意味があります。「ひともうけをー」「陰謀(いんぼう:ひそかに悪い計画をたてる)をー」などが例です。
「魂(たましい)」とは、「動物の体に宿り、精神のはたらきのもとをなすと考えられているもの」という意味があります。「霊魂」と表すこともあります。
また、「胆」とは、胆石や胆のうなどの消化器官を表すほか、「肝っ玉(きもったま)」ともいうように、度胸や勇気といった意味もあります。
「魂」と「胆」、どちらも人間にとって核となるような部分が合わさり、心の中の本当の気持ちを表しているのです。
「魂胆」の例文と使い方
- いつもはわがままに振る舞う彼が、今日はなぜか親切だ。何か魂胆があるのではないか。
- 息子が珍しく家事を手伝うが、この間欲しいゲームがあると言っていた。魂胆見え見えだ。
- 他人に興味のない彼がボランティア活動をするなんて、何か魂胆があるに違いない。
このように、明らかにいつもとは違う態度を取ると、「魂胆があるのでは」と疑われることが多いのではないでしょうか。
「魂胆」の類義語
- 心積(づ)もり:「心の中であらかじめこうしようと考えておくこと」という意味です。計画するという点では「魂胆」と同じですが、悪だくみをするという意味はありません。
- 下心:こちらは「魂胆」と似た意味で使われる言葉です。「表に出さずに心の中で考えていることや、たくらみ」という意味です。恋愛の駆け引きで、「下心があって近づく」などと使われているのを見たことがあるのではないでしょうか。
- 胸中(きょうちゅう):漢字の通り、「胸の中、心の中の思い」という意味です。「心中(しんちゅう)」と言い換えることもできます。
「魂胆」という小説
明治時代の小説家、饗庭篁村(あえばこうそん)をご存じでしょうか。劇評家、新聞記者としても活躍しました。その篁村の代表作といわれている『むら竹』という作品集の中に、「魂胆」というものがあるのです。
『むら竹』は全20巻という大作で、小説や伝記、紀行、随筆など、さまざまなジャンルの作品が収められています。篁村の書籍は現在では入手困難なため、気になる方は図書館などで聞いてみると良いでしょう。
「魂胆」のまとめ
他人と接する際に、「自分の評価を上げたい」「いい人だと思われたい」と考えるのは、誰にでもあるのではないでしょうか。損得を全く考えずに生きていくのは、よほど品行方正でないと難しいかもしれません。
しかし、あまりに「魂胆」が見え見えだと、「計算高い」「ずる賢い」など、マイナスの印象を持たれてしまうかもしれません。もし「魂胆」があったとしても、相手に気づかれないようにさりげなく行動すると良いのかもしれませんね。