「絶賛」とは
「絶賛」とは「絶大な賛美、またこの上ない称賛。口を極めて褒めること」というのが本来の意味です。意味からすると「絶讃」とするほうが正しいようですが、現在では「讃」にごんべんがない「絶賛」と書くほうが一般的です。
「絶賛」と「称賛」の違い
「絶賛」と「称賛(賞賛)」はどちらも褒めるという意味があります。ただし、「絶賛」のほうが「称賛」よりもさらに上をいく、より強い意味が込められています。確かに「絶賛された」というと「ものすごく褒められた」というニュアンスが感じられます。
英語では「extol」と「praise」の関係が、これに当たります。「extol」が絶賛するという意味で、「praise」が称賛するという意味になります。
「絶賛」の由来
「絶賛」は意外にも、歴史が浅い造語のようです。大正8年(1919年)に雑誌『改造』を創刊した山本実彦(やまもと・さねひこ)がつくったとされています。初出やどういう文脈で使われたかなど、詳細は不明ですが、生まれてからまだ100年に達していない言葉なのは間違いないようです。
『改造』といえば、武者小路実篤『或る男』、志賀直哉『暗夜行路』、火野葦平『麦と兵隊』など、多くの近代文学の名作が発表された雑誌ですから、山本の雑誌編集者としての卓越した手腕がうかがい知れます。その山本の造語が現代においてここまで一般化したというのは、独特の鋭い言語センスのなせる業なのかもしれません。
本当に「絶賛」?
各メディア、特にネットでの「絶賛」を見ていくと、「絶賛の声」「大絶賛」「絶賛の嵐」といった言い回しが半ば定型句のように使われています。
誰がどのような経緯で褒めたのか、どんな褒め方をすれば絶賛の声なのか、絶賛だけでもこの上なく褒めているのに、さらにどれだけ褒めちぎれば「大」がつくのか、いったい何人以上の人が褒めれば「声」が「嵐」に変わるのか、こうしたことを疑問に思う方もおられるでしょう。
しかし、それをあれこれ言うのは野暮というもので、いずれのケースもそれほど明確ではありません。ほとんどは、実際に褒められているという事実を述べたわけではなく、商品にプラスの印象を加える広告的な売り口上として使われていると言ってよいでしょう。
オンライン広告のガイドラインによると、最上級表現、大げさな表現などには明確な根拠を示すことが必要だったり、制限がかけられたりしています。ですから、厳しく見れば、不用意な「絶賛」の使用は、ガイドラインに触れる可能性もなくはないです。
しかし「絶賛」の文言は、必ずしも広告内で使われているわけではありませんし、手間をかけずに読者(視聴者・消費者)に訴えかけるよい手段であるため、現在でも広く使われています。
「絶賛」の使い方
以上を踏まえて、用例をいくつか挙げてみました。実際に褒める意味合いがあるものと、そうでないものとに分けています。
褒めている
- Aさんが絶賛していたコンビニスイーツは、やっぱりおいしかった。
- 評論家諸氏の絶賛を博した映画だけあって、初回の上映は満席だった。
- サポーターが試合後にゴミを拾う行為は、海外メディアから絶賛されている。
特に褒めてはいない?
- 人気作家B氏の新作小説が、絶賛発売中です。
- 絶賛放映中のTVドラマ「〇〇」は来年、映画化が予定されています。
絶賛中、あれこれ
本来の「この上なく褒めること」とは特に関係なく、「絶賛」が使われるケースがあります。多くは広告のパロディーで、現在進行形の行為(状態)に対して「絶賛〇〇中!」「〇〇絶賛中!」と表現します。ちょっと笑える、ウィットに富んだ表現をいくつか紹介します。
- 絶賛遅刻中
- 絶賛育児中
- 絶賛打ち身中
- 換毛期絶賛中(うさぎ)
- 勉強教えてやる詐欺をリア友にやられて絶賛中
- 幸せ寝不足絶賛中
- メンタルズタボロ絶賛中
いずれも褒める(褒められる)要素はゼロですが、SNSなどではむしろこちらの使い方のほうが主流かもしれません。「絶賛の誤用だ!」と目くじらを立てず、「絶賛中」の面白い言い回しを楽しんでみてはいかがでしょう?