「勧める」の意味
まず、「勧める」は次のような意味です。
②励まして気を引き立てる。激励する。
③(酒や薬などを)相手に差し出す。(敷物などを)利用するようにと差し出す。
①は、「勧誘する」と同じ意味です。①にある「奨励(しょうれい)」とは、「良いこととして励まし、それをするように(強く)促すこと」という意味です。②の「激励(げきれい)」は、「励まして元気づけること。奮い立たせたり勇気づけたりすること。」という意味です。③は、話し言葉で言うと、「(よろしかったら)どうぞ」という意味ですね。
「勧める」の例文
- 卓球部への入部を勧められた。
- 自治会への入会を勧める。
- 僕は、田中君に生徒会長への立候補を勧めた。
- 薬局で相談したら、この薬を勧められた。
- 祈祷の後、お神酒を勧められることがある。
- 眼科検診をしたら、眼鏡を勧められた。
3.の「立候補を勧めた」は、②の意味の、「励まして気を引き立てる。激励する。」に当てはまります。4.は、”この薬を差し出して”という場面から、「勧める」を用います。
「薦める」の意味
一方、「薦める」は次のような意味になります。
「推薦」とは、「①ある人物を優れていると認めて、他の人に紹介すること。②特定の物や事柄を優れていると認め、その使用を促すこと。」を指します。①は、「推挙」とほぼ同じ意味です。「推挙」は、「ある仕事・地位・役職などに、適当な人だとして他の人に紹介すること」という意味であり、主に官職において使用されます。
「薦める」の例文
- 僕は、田中君を生徒会長に薦めた。
- 歯科医師が薦めた歯ブラシを使っています。
- 英語の先生が、この辞書を薦めてくれた。
- 教授が薦めた勉強法をやってみたところ、成績が上がった。
1.は、他の人に”田中君”をすすめているので「薦める」を用います。4.は、教授がおすすめしている(特定の)勉強法なので、「薦める」を用います。それに対し、「教授が僕に勉強をすすめた。」という文の場合は、「勧める」を用います。
「勧める」と「薦める」の違い
違いを簡単にまとめると、「勧める」は、さそったり、励ましたり、差し出したりする(=「どうぞ」)場面で用います。それに対して「薦める」は、ある人や物を他人に推薦する場面で用いる、ということです。
名詞「勧め」の意味
ところで、「勧める」は「勧め」という名詞では他の解釈も加わり、次のような意味になります。
②勧進。
慶応義塾大学の創設者としても有名な、福沢諭吉の代表作である『学問のすすめ』が①の例です。この「すすめ」を漢字にすると、「勧め」となります。福沢諭吉は、この本を通して学問をすることを人々に(強く)促しました。当時の日本では、300万部以上発行したとされ、多くの人々に読まれました。
②の「勧進(かんじん)」とは、「勧化(かんげ)」とも言い、人々に仏道をすすめて善に向かわせることや、社寺・仏像の建立・修繕などのために金品を募ること、又は物乞いという意味です。「勧進相撲」が有名ですが、これは寺社の修理・修復のための費用を集める為に相撲を行うことです。現在では、「勧進」は言われなくなり、「大相撲」と呼ばれるようになりました。
「勧善懲悪」とは
「勧める」の「勧」を含む四字熟語、「勧善懲悪(かんぜんちょうあく)」も見てみましょう。コトバの意味辞典にもありますが、「勧善懲悪」とは次のような意味です。
最後に「善」が勝ち、「悪」を懲らしめる構図は、見ている人の心をすっきりさせる効果があると思います。国民的時代劇とも言われる「水戸黄門」は、まさにこの「勧善懲悪」と言っても過言ではありません。徳川光圀が扮する黄門様が、助さん角さんを引き連れて旅をする物語は、今でも日本人に愛され続けています。
まとめ
「勧」の漢字は、右側の「力」が「努める」ことを、「力」を除く左側の部分は、「強い」という意味があるそうです。これらを合わせて、あえて(強いて)努めさせる、あえてすすめるという意味があります。福沢諭吉は、あえて学問を人々に勧めました。あらゆる偉業をなしとげたので、一万円札にも印刷されています。