「縁の下の力持ち」の意味
「縁(えん)の下の力持ち」ということわざは、「他人のために陰で努力したり、苦労すること」や、そういう人を表す言い方です。
「縁」とは「縁側」のことです。和風の家屋で、和室の外側に面したふちに設ける板敷きの部分を指します。通常は雨戸の内側につくるものを縁側といい、窓の外につくるものは「濡れ縁」とも呼ばれるようです。
「縁の下」とは縁側の下、すなわち床下を意味します。家屋の床下には多くの柱があって建物を支えています。この柱のように、外からは見えないが、陰ながら力強くみんなを支えている人、といった比喩表現が「縁の下の力持ち」です。
「縁の下の力持ち」の由来
「縁の下の力持ち」ということわざは、そもそも「いろはかるた」から由来していると考えられています。
古い日本語のいろは四十八文字を頭文字にして、その字から始まることわざなどを集めたのが「いろはかるた」です。江戸時代に上方(関西)で発祥したとされ、生活にまつわる語呂の良いことわざの札を、絵札と合わせて取り合う、正月などの子供の遊びとして広まったようです。
「上方いろはかるた」「江戸いろはかるた」など地域によってことわざの内容が異なる種類があり、このうち「縁の下の力持ち」は現在の東海地方の「尾張いろは」に盛り込まれていたとされます。また一説には、「縁の下の力持ち」は「縁の下の舞」をもじったものともいわれます。「縁の下の舞」は上方いろはの中にあり、意味は「縁の下の力持ち」と同じです。
これは元々、大阪・天王寺での「聖徳太子聖霊祭」で行われた舞楽のことだとされます。公の舞台ではなく、非公開でひっそり行われていたことから「陰で人知れず支えている」といった意味合いに転じて用いられたようです。
「縁の下の力持ち」の使い方と例文
このように「縁の下の力持ち」は、「表舞台に立つことはないが、非常に重要な存在で、働きも欠かせない大事な人」といったように、他者を尊びほめたたえる表現だといえます。
名前が知られることもなく裏方で黙々と仕事に励み、表に立つ人々を支える人物や、そうした行動のことを表すことわざですので、「檜舞台で大活躍し、スポットライトを浴びている人」については用いません。
このため「優勝できたのは、四番でエースの彼が、チームを引っ張る縁の下の力持ちだったからだ」といった使い方は間違いとなります。
「縁の下の力持ち」の正しい例文
- このような名誉ある賞をいただけたのは、両親や家族ら、縁の下の力持ちとなって陰ながら支えてくれた人たちがいたからです。
- 彼はいつも自分の力だけで仕事が成功しているような気でいるようだが、縁の下の力持ちがあってのことだと、そろそろ分かってほしいものだ。
- 長年頑張ってこれたのも、ひとえに縁の下の力持ちである皆さんのおかげだと、感謝しています。
「縁の下の力持ち」の類語
- 縁の下の舞
- 内助の功
- 闇の独り舞
- 陰の立役者
- 引き立て役
- 名脇役
「縁の下の力持ち」の英語表現
- backseat player(後部座席の選手、控え選手=黒子)
- unsung hero(偉業を正しく評価されない英雄)
- She was willing to work in the background. (彼女はすすんで縁の下の力持ちになった)
「縁の下の力持ち」のまとめ
大きな成功を遂げたり、大記録を達成したり、難関試験に合格したりするのは、もちろん本人の血のにじむような努力や才能があってこその偉業です。
しかし、その過程には、陰ながら支え、応援したり励ましたり、全力で後押しする多くの「縁の下の力持ち」がいることも忘れてはなりません。
わたしたちの社会自体も、無数の「縁の下の力持ち」によって成り立っているといえます。誰しも華やかな成功を夢見るものですが、その前にまず、社会の誰かの力になる、一人の「縁の下の力持ち」でいれると良いのではないでしょうか。