「正味」の基本的な意味
「正味」とは「余分なところ、使わないところや包装などを除いた、実質的に意味のある部分の数量」のことを指します。「正目(しょうめ)」や「純量」、「ネット(NET)」とも言います。
以下に、日常生活で「正味」と表現されるものの例を挙げます。
実際に使える部分
料理を例に取ると、ある食材の「実際に使う部分」あるいは「食べられる部分」の量が「正味」となります。例えばレシピに「柿:正味500gを準備してください」とあったとします。柿の実の皮や芯、種は食べられません。従って、それらの部分を除いた果肉部分(=可食部)が500g必要、ということになるのです。
容器を除いた本体の重さ
容器に入った物の重さを量るとき、器のことを「風袋(ふうたい)」と呼びますが、「風袋を除いた実質の物の重さ」のことも「正味」と表現します。「正味重量」ということですね。
また、スーパーで売られている精肉のパックのラベルにも「正味400g」のように書かれていたりします。この場合は、パックやラップなどを除いた食材としてのお肉の重量が400gという意味です。
さらに、商品輸送などで「正味100kgです」と言われたら、「梱包材を除いた本体の部分」を指します。
実質的な数の部分
別の例も挙げてみましょう。
ある人が8時から17時まで仕事をしていたとします。定められた休憩時間は1時間ですが、その日は途中でトラブルが生じ、さらに1時間の待機を余儀なくされたとしましょう。そうすると、拘束時間は9時間でも、この日作業できたのは、実質的に「正味7時間」だったと表現できるわけです。
表面的にはわからない真実の部分
こうした数量や時間のほかにも、「正味」という言葉が持つ「実質」という意味から派生して、「表面的にはわからない、本当のところ・真実」についても「正味」という場合があります。
使われる機会は多くないかもしれませんが、「話の正味を聞かせてください」というと、事実や本音を隠さず教えてほしいという意味合いになります。
出版業界の「正味」
「正味」という言葉は、「原価」や「仕入価格」を指し示す場合もあります。特に出版業界の「正味」は特徴的です。
一般的に、商品を消費者へ販売するときは、仕入価格から逆算します。例えば700円の仕入価格のもので3割の利益(=300円)を出したい場合は、販売価格を1000円に設定します。
しかし、出版業界では違います。なぜなら、消費者への販売価格(=定価)は書籍を企画した出版社が決定するからです。
その定価を元に、①出版社→取次会社間、②取次会社→書店間でそれぞれの販売価格(=卸値)を決めます。この卸値を決めるときの掛け率を掛けた価格が「正味」(=仕入価格)です。
「正味70%」「正味7掛」と言ったら、定価1000円の書籍なら、仕入値は700円というわけですね。
関西弁の「正味」「しょうみ」「しょーみ」
「正味」は関西弁としてもポピュラーな言葉です。関西人以外には英語の”show me(見せて!)”と誤解されることもあるこの言葉、元々の意味は、「前置きなどの余分なところを取り除いた要点」のことだと言われています。横山やすしさんの「正味の話」という口癖が有名ですね。
現在では、どちらかというと「正直なところ」「率直に言って」の意味で使われることが多いようです。関西弁はもちろん、他の地域でも、若者同士のくだけた表現で使われています。
若者言葉の「正味」は、「しょうみ(しょーみ)今すぐ部活辞めたいわ」のように、「しょうみ」「しょーみ」と表記されるケースが多いようです。
「正味」の同音意義語
「賞味」
「賞味」は「(ほめたたえながら)味わって食べること」です。「頂き物のお菓子を皆で賞味した」のように使います。
「賞味」を使った「賞味期限」という言葉もありますね。食品を買うときに必ず確認する方もいると思います。これは、「食品を美味しく食べられる期限」のことです。
似たような言葉で「消費期限」がありますが、こちらは、「食品を消費する(=食べられる)期限」のことです。「賞味期限」を過ぎても、風味こそ落ちますがしばらくは食べられます。しかし、「消費期限」を過ぎたら食べないほうがよいという意味です。似て非なるものですので、気をつけましょう。
「笑味」
一方、「笑味」という漢字を当てる場合は、「(謙遜して)美味しくないかもしれませんが、どうか笑ってお召し上がりください」という意味になります。例えばお土産を渡すときなど、「ご笑味ください」と言ってお渡しするのが礼儀に適っています。
同じく「食」に関する言葉でも、「賞味」と「笑味」はまったく意味が異なりますので、特に文章にするときなどは間違わないようにしましょう。
「正味」のまとめ
今回のテーマ「正味」、たくさんの意味がある言葉でしたね。おおまかな意味をまとめると、「余分なところを省いた数量」や「本当のところ」「原価」といったところです。それを覚えているだけでもきっと応用が利くのではないでしょうか。
なお、時には「正味」と言っても相手に意味が伝わらないこともあるでしょう。そんなときは、わかりやすい表現に言い換えて教えてあげると親切ですね。