「猖獗」の読み方
「猖獗」の読みは「しょうけつ」です。「猖」の「昌」、「獗」の「厥」がそれぞれ「ショウ」「ケツ」と読む漢字なのですが、「昌」はともかく、「厥」はまず目にする機会がないので、読むのも難しい熟語になっていますね。
「猖獗」の意味
悪いものがのさばる
「猖獗」とは悪いものが勢いづき広まっていくことです。はびこるとも言えます。
本来なら排除されているはずの悪いものが、我が物顔でのさばっているような様子です。あるいは、管理や制限を振り切って暴れまわっているような状況を指します。手を付けられないくらいに猛威を振るっている異常事態ですね。
悪いものや好ましくないものにのみ使う言葉です。例えばマフィアやギャングが幅を利かせている様子。あるいは伝染病が一気に広がり、パンデミックを引き起こしているような状況です。
転覆する
「猖獗」には転覆する、失敗するという意味もあります。ただし、現在ではこの意味ではほとんど使われません。そういう意味も一応あるという程度です。古文や漢文で見かけた場合は、この意味である可能性もあります。
「猖獗」の字義
日常ではまず見ない「猖獗」ですが、それぞれどのような意味のある文字なのでしょうか。
「猖」の意味は暴れること。騒ぎ狂うことや乱れることです。けものへんは犬を指し、「昌」はここではさかんな様子です。たけり狂う犬という意味ですね。「獗」もまた、たけり狂うという意味です。その他、悪事が得意という意味もあります。
似た意味の字を重ねることで、意味を強めています。けもののように興奮して暴れている様子にふさわしい言葉です。
「猖獗」の使い方
「猖獗」は病気が流行ることに使われることの多い言葉です。黒死病(ペスト)や天然痘(てんねんとう)、コレラなど、人類を脅かすという表現がふさわしい危険な病が流行している様子を表すのに使われます。
良くない文化や風習を伝染病にたとえて使うこともあります。麻薬や魔女狩り、怪しげな宗教などがその例です。まるで感染していくかのように増えていき、勢いづいていく状態を表します。
猖獗を極める
「猖獗」は「猖獗を極める」という形でよく使われます。「極める」というくらいですからこれ以上ないくらい勢いづいている、全盛期真っただ中です。
【例文】
- 隣国で猖獗を極めていた疫病が、ついにこの国でもはやり始めた。
- 当時はまだ原始的な宗教が猖獗を極めていて、いけにえを捧げるという行為が当たり前のように行われていた。
- 海賊どもはいよいよ猖獗を極めており、付近を通る船という船を手当たり次第に襲っております。
「猖獗」の類語
跳梁跋扈
「跳梁跋扈」は「ちょうりょうばっこ」と読みます。悪いものがのさばりはびこるという意味です。いわゆる「憎まれっ子世にはばかる」ですね。
「跳梁(ちょうりょう)」は元々は跳ね回ることという意味だったのですが、今では好ましくないものがのさばっている、はびこっているという意味で使われています。
「跋扈(ばっこ)とは」ほしいままにふるまう、やりたい放題するという意味です。魚が、かごから飛び跳ねて逃げていく様子から生まれた言葉です。
瀰漫
「瀰漫」は「びまん」と読みます。あたりに立ち込めていく、広まっていくという意味です。「瀰」と「漫」はどちらも水が深く広く伸びていく様子を表す字です。締まりがないという意味もあります。
「充満」や「普及」「浸透」と似た意味ですが、「瀰漫」は悪い文化や悪習、不穏な空気など好ましくないものが広まることにしか使われません。
氾濫
「氾濫」の読み方は「はんらん」です。元は川の水が増えてあふれ出すという意味ですが、悪いものが出回ってあふれだすという意味もあります。
悪いものを水があふれる様子にたとえると「氾濫」、草が生い茂っていく様子にたとえると「蔓延(まんえん)」と言えます。平易な言葉にすれば「横行」ですね。