「人一倍」とは?
「人一倍」(ひといちばい)とは、「普通の人以上(であること)」や「人並み以上であること」という意味の言葉です。
しかし、「一倍」といえば通常は「×1」のことですから、「普通の人」を「×1」しても「普通の人」のまま変わりません。なぜ「人一倍」が「普通の人以上」という意味なのでしょうか。
なぜ「一倍」なのか?
これは、倍数における基数の問題と考えることができます。「借りは、倍にして返す」「売り上げが倍になる」などの言葉からわかるように、「(一)倍」にはそもそも「同じ数を二つ合わせること」≒「二倍」の意味があるのです。
つまり、「人一倍」は、「人」「×1」ではなく、「人」「1×(2)倍」の意であり、「普通の人をふたりぶん合わせた」≒「普通の人よりも大きい」意味合いとなるわけです。
このように、「一倍」で「×2」を表すような倍数表現を「層倍」(そうばい)と言いますが、こうした基数の扱いは日本独自のもので、現代の西洋数学では通常このような表現はしません。しかし、「人一倍」という国語表現は、現代にもそのまま残ったかたちです。
「人一倍」の使い方
「人一倍」は、「人一倍の努力家」「人一倍、几帳面に掃除する」などのように、人間のある性質が普通の人以上であることを指して使います。
「倍」という言葉を使いますが、あくまでも慣用表現ですので、「×2」であることを意識する必要はなく、単に「普通」(と思われる基準)よりも程度が大きいという様子を指して使うことができます。
どちらかと言えば良い意味(長所の表現)で使われる傾向にありますが、「人一倍、気が短い」など、短所や、ネガティブな文脈でも使うことはできます。
例文
- 彼の昆虫に対する興味は人一倍で、将来は昆虫学者になるのではないかと言われていた。
- 私の姉は、人一倍気を遣う性格で、いつも他人のことばかり考えて気疲れしていました。
- ずっと孤独だったあの子にとって、愛されたいという欲求は人一倍強いものだろう。
- 私は皮膚病を抱えているので、冬の寒さと乾燥には人一倍苦しみます。
「人一倍」の類語
- 人よりも
- (人より)ずっと
- (人より)さらに
- (人より)一層
- (人より)一段と
- (人より)ひときわ
- (人より)まして