「一挙手一投足」の意味とは?
「一挙手一投足」(いっきょしゅいっとうそく)の意味は、以下の2つです。
- ほんのわずかな労力
- 一つ一つの細かな動作・ちょっとした仕草
「一挙手一投足」のもともとの意味は1でした。派生して、ほんの少しの細かな動作のひとつずつを表す2の意味ができたのです。
「一挙手一投足」の由来
「一挙手一投足」は、『応科目時与人書(科目に応ずる時、人に与ふる書)』の文章に由来しています。これは、中国の詩人、韓愈(かんゆ)が国の役人になるための試験である科挙に合格しよう、知人に推薦状を依頼した手紙です。
韓愈はこの手紙に、 「私の困っている様子を憐れんで推薦状を書くのは、あなたにとって一手を挙げ一足を動かすほどの労力なのです。」と書いています。つまり、ほんの一度だけ手を挙げ、一度だけ足を動かすということを「わずかな手間」の例えとしています。
「一挙手一投足」の使い方と例文
1.ほんのわずかな労力
「一挙手一投足」は、出典にもあるように相手にささやかな助力をしたり、ほんの少しだけ手間をかけて人の世話を焼いたりといったことを表現する際に使います。ただし、現在では、このような意味で使われる例はわずかです。
【例文】
- 「Aさんは親切ですね。」と褒めると、「一挙手一投足の労に過ぎませんよ。」と謙遜していた。
- B氏は余裕があるにも関わらず、困っている人を目の当たりにしても一挙手一投足の手間を惜しむような冷たい人だ。
2.細かな動作・ちょっとした仕草
好きな人や尊敬する人の些細な動作を観察してしまう、逆に、嫌いな相手のわずかな動作が鼻についてしまうという場合があるでしょう。そのようなときの相手の些細な動作を「一挙手一投足」で表します。
【例文】
- 憧れのA先輩の一挙手一投足が気になってしょうがない。
- 上品なBさんのようになりたくて、一挙手一投足をついつい観察してしまう。
- Cさんの媚びるような話し方が気になって以来、一挙手一投足が目について気分が悪い。
- 嫌なDさんの一挙手一投足をつぶさに観察して、自分はあのようにならないよう注意したい。
また、好き嫌いといった思いはなく、たとえば、政治家や芸能人などの動向に注目している、ふと見かけた人の行動を目で追ってしまうといった場合にも「一挙手一投足」を使うことがあります。
【例文】
- 熱愛報道の渦中にある、人気タレントのEさんの一挙手一投足にみんなが注目している。
- 駅で見かけた男性の雰囲気が怪しげで、通り過ぎるまで一挙手一投足を目で追ってしまった。
「一挙手一投足」の類語
ここでは、2の意味で用いられる「一挙手一投足」の類語を紹介しましょう。
一挙一動
「一挙一動」(いっきょいちどう)は、一つ一つの動作、ちょっとした振る舞いを表す四字熟語です。一説には、動作や立ち居振る舞いを表す熟語「挙動」を「挙」と「動」に分け、ちょっとした、もしくは一度という意味の「一」を間に入れて成り立ったといわれています。
【例文】
- コンサートでは、演奏者の一挙一動に聴衆が注目していた。
- 彼女のような素敵な人は、一挙一動が上品で優雅に感じられる。
坐作進退・座作進退
「坐作進退/座作進退」(ざさしんたい)とは、日常の動作や身のこなし、立ち居振る舞いのことです。それぞれの字義は「坐・座」で座る、「作」で立ち上がる、「進」で(前に)進む、「退」で(後ろに)退くことを表し、合わせて普段の動作を表しています。
【例文】
- 式典のリハーサルで、坐作進退について細かい注意がされた。
- 華道や茶道に通じているだけあって、彼女の座作進退は完璧なものだった。