「弄する」とは?
「弄する」は、(ろうする)または(ろうずる)と読みますが、濁点をつけないのが一般的です。「弄する」には、大きくわけて下記の二つの意味があります。
- もてあそぶ。ほしいままにする。思うままに操る。
- あざける。ひやかす、からかう。嘲弄(ちょうろう)する。なぶりものにする。
2は昔の用法で、いまの日本語ではほとんど使われていません。
「弄」の字義
「弄する」をより深く知るために、「弄」の字義を紹介します。「弄」は、音読みが(ろう)、訓読みが(もてあそ・ぶ。いじ・る。いじく・る。いら・う。あなど・る。たわむ・れる)。意味は下記の四つです。
- もてあそぶ。いじる。
- あなどる。なぶりものにする。
- たわむれる。たわむれ。
- ほしいままにする。思うままに操る。
「弄する」の1の意味に相当する字義は、1または4です。
「弄する」の使い方
「弄する」という言葉単体では、多くの人が意味をとらえづらいことでしょう。なぜなら、この言葉は「○○を弄する」のように、前に目的語を伴って成立するからです。
この「○○」に相当するのは、はかりごと(物事がうまく進むように考えた手段や計略)、企て(くわだて:計画することや、その内容)に関する言葉です。現代日本語では、多くの場合、次に挙げるような定型的な言い回しで用いられます。
「策を弄する」
「策」には、企て、計画、はかりごとといった意味があります。「策(さく)を弄する」は、文字通りに捉えるならば、物事をうまく進めるためにはかりごとをするという意味です。このように、「策を弄する」をポジティブな意味で使うこともあります。
しかし、多くの場合は、必要以上に策を用いる、卑怯な手段を使う、といったネガティブな含みのある表現として用いられます。また、「手段を弄する」という慣用句も同じような意味です。
【例文】
- 客を飽きさせないためには、手を替え品を替え、策を弄する必要がある。
- 彼は敵対する派閥を潰すために、部下たちに命じてさまざまな策を弄した。
- 姑息な手段を弄するよりも、誠心誠意、相手と話しをする方が良いように思われた。
「詭弁を弄する」
「詭弁(きべん)」とは、道理に合わないことを強引に正当化するような弁論、もっともらしいこじつけのことです。
よって、「詭弁を弄する」は、なにかと理屈をつけて間違ったことを正しいと認めさせるような主張をすることを意味します。
似たような表現には、「言葉を弄する」「甘言を弄する」などがあります。どちらも、言葉巧みに相手を言いくるめることを表す慣用句です。
【例文】
- あの政治家は、遊説を重ねるごとに馬脚を現し、世間に詭弁を弄する人物と認識された。
- 彼は浮気を妻に咎められたが、なんやかやと言葉を弄して逃げ切った。
「逆説を弄する」
ここでの「逆説」は、事実に反しているようで説得力ある説、あるいは、世間一般で認められている説に反する説という意味です。
「逆説を弄する」とは、事実とは異なるのにもっともらしく聞こえることを言って相手を混乱させることを表します。また、世間一般の真理に反した天邪鬼(あまのじゃく)のような発言をするというニュアンスで用いられることもあります。
【例文】
- 彼は、政治的な発言をした著名人のSNSアカウントに対し、逆説を弄して執拗に絡んでいた。
- 私は意地を張って逆説を弄しているわけではない。心からそう思っているだけだ。
「小細工を弄する」
「小細工(こざいく)」には、一時しのぎのつまらない計略という意味があります。「小細工を弄する」とは、底の浅い計略で何とかしようとすること、ずる賢い手段を使うことを表す言い回しです。
【例文】
- 小細工を弄する連中をものともせずに、彼はあっという間に出世していった。
- 彼女は曲がったことが嫌いな性格だから、小細工を弄するような真似はしない。