天邪鬼とは
「天邪鬼」は「あまのじゃく」と読みます。人の性格、あるいは日本の神話に登場する怪物のことを指します。
「天邪鬼」とはどんな性格?
「天邪鬼」の意味
「天邪鬼」とは、元々は人の心を読んだ上で希望とは反対のことをする妖怪のこと。そこから転じて、あえて人とは違うことをする人や本心とは逆のことをする人、わざと正しくないことをする人のことを指すようになりました。
今では、人に逆らうこと自体を目的として逆らう人という意味で使われています。別の言葉で言い換えれば、素直ではない人や意地が悪い人、ひねくれものといったところです。
「天邪鬼」の使い方
- 天邪鬼な性分なもので、人気があるといわれると見たいと思わなくなる。結局、流行を外してマイナーな作品を見に行った。
- 感謝の言葉くらい素直に言えばいいのに、本当に天邪鬼なんだから。
- みんなが賛成しているのに反対するなんて、天邪鬼もいいところだ。
仏教における「天邪鬼」
仏像の足元にいる小鬼
仏教で「天邪鬼」というと、仁王像や四天王像などの仏像の足元にいる小鬼のことです。この小鬼たちは人間の欲望や煩悩の象徴とされており、仏法の守護者たる四天王たちが懲らしめている様子が描写されています。
また、これらの小鬼たちは四天王の配下であり、足で踏まれているのは制御されていることを表しているという説もあります。仁王も四天王も元々は仏と対立していましたが、後に改心して仏に従うようになった鬼。足元の小鬼も、昔は人々に危害を加えていた悪鬼です。
毘沙門天の鎧に描かれた鬼
仏像の足元の小鬼が「天邪鬼」と呼ばれるようになったのは後世の後付けで、「天邪鬼」は実は毘沙門天の鎧についている鬼の面のことでした。
なぜこれが「天邪鬼」と呼ばれているのでしょう?この面の由来は、中国の妖怪「海若(かいじゃく)」です。この「海若」を訓読みすると「あまのじゃく」と読めるからだそう。
なお、この「海若」の別名は「河伯(かはく)」です。これはなんと、日本でいうところの「河童(かっぱ)」です。
民話や神話における「天邪鬼」
日本の民話や神話にも「天邪鬼」は登場します。神やその眷属であるとも妖怪の一種ともいわれ、その正体ははっきりしていません。ただし、名前の通り天の邪魔をする鬼という役割からブレることはありません。有名な話を紹介します。
アマノザコ
「天邪鬼」の元となったとされる妖怪が、「アマノザコ」です。『古事記』には須佐之男命(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治するという有名な話がありますね。
この時、須佐之男命が吐き出した邪気が固まって「アマノザコ」という神が誕生したとされているのです。「アマノザコ」は正義や秩序を反対にしようとする性格で、人々の心を乱したり悪影響を与える神や妖怪の祖先といわれています。
アマノサグメ
「天探女(あまのさぐめ)」は最も有名な「天邪鬼」の一種です。彼女は天照大御神により地上世界を平定するようにと派遣された、天若日子(あまのわかひこ)という人物に仕えていました。
さて、そのような命を受けた天若日子ですが、彼はそのための仕事をしませんでした。なぜなら、彼は地上世界を自分のものにしようと企んでいたからです。ある時、そんな彼の様子を探るために天から雉が派遣されました。
その雉を殺すようにと唆したのが天探女です。いわれるままに雉を殺した天若日子ですが、天から罰が当たって彼も死んでしまいます。このような経緯から、天の意思を邪魔する悪い鬼という意味で「天邪鬼」という言葉が生まれたともいわれています。
瓜子姫
「瓜子姫」は民話や昔ばなしです。かぐや姫よろしく、瓜から生まれた瓜子姫は大変美しい女性に育ちます。そんな彼女はとあるお殿様に嫁ぐことになりました。ところが、そんな彼女を「天邪鬼」が邪魔します。「天邪鬼」は瓜子姫を隠してしまい、自分が姫になりすまします。
結局は「天邪鬼」は退治され、本物の瓜子姫は無事幸せに暮らす、というお話です。地域によって話の展開や結末は異なるとされています。