「博愛」とは?意味や使い方をご紹介

「博愛」は、「博愛精神」「博愛主義」というかたちで使われることも多い言葉です。近代的意味での「博愛」の起源は、フランス革命における標語に遡ります。差別や格差が問題となる今、知っておく意味はありそうです。今回は「博愛」の意味と使い方を類語も含めてご紹介します。

目次

  1. 「博愛」とは?
  2. 「博愛」とフランス革命
  3. 「博愛」の使い方
  4. 「博愛主義」と「博愛精神」
  5. 「博愛」の類語

「博愛」とは?

「博愛」(はくあい)の意味を知るには、「博」という字を理解することが欠かせません。「愛」はお馴染みの言葉ですが、「博」によってどのような意味が加わるのでしょうか。

「博」は、ひろい、ひろく行きわたる、という字義をもつ漢字です。したがって、「博愛」は、ひろく誰にも行きわたる愛、という二つの漢字の字義をもち、すなわち、ひろく愛すること、すべての人を平等に愛すること、を意味します。

もう少し詳しくいえば、倫理的に人間は平等である、という理想から発し人種、性別、宗教、民族、国家、階級、イデオロギーなどを越えて、すべての人を等しく愛することが「博愛」です。

「博愛」とフランス革命

フランス革命は、1789年にパリの民衆が決起し、バスティーユ牢獄を襲撃したことから始まるフランスの市民革命、資本主義革命です。1793年に、革命の標語として「自由」「平等」「博愛」が採決され、これらの言葉は今なおフランスのモットーとなっています。

「自由」と「平等」の相関関係は、実のところ微妙なものがあります。「自由」という名のもとに他者を搾取するような利益を得るとすれば、「平等」は損なわれます。そこで、「自由」でありつつも相互の節制や自己抑制が必要となります。

つまりは、すべてを等しいものとみなす「博愛」の精神に裏打ちされた「自由」と「平等」が理想として掲げられたといえましょう。「博愛」と同様の概念はもちろんフランス革命以前にも存在しましたが、近代の「博愛」はこの革命標語を基準として世界に波及してゆきました。

単なる観念上の愛ではなく、互いをおかさない自由と平等を目指す意味での「博愛」は、現代でもボランティアやNGOなどの基本理念となっています。日本赤十字社も、その前身を「博愛社」と称していました。

「博愛」の使い方

「博愛」は、日常会話で使われることはあまりない、ある意味固い表現の言葉ですが、人種差別や貧富の差が大きな問題となっている、いわゆる格差社会においては、その解決にいっそう重要なキーワードとなります。

ひとつ注意すべきポイントは、すべてを広く愛するとはいえ、その対象は人間に限ることです。自然やあらゆる生き物をも愛することはさらに大きな「愛」に違いありませんが、そのことを「博愛」と呼ぶことはできません。

「博愛」の例文

  • この地域には、さまざまな国からの避難民が暮らしています。キャンプは博愛の心をもって運営されています。
  • 地球は、人種、性別、階級、国、宗教などありとあらゆる異なりをもつ人間が存在する惑星だ。博愛なしには人類は滅びてしまう。

「博愛主義」と「博愛精神」

「博愛」は、この言葉単体でも用いられますが、「博愛主義」「博愛精神」というかたちで使われることが多くあります。

どちらの言葉も、生き方、考え方として「博愛」の気持ちを持ち続けること、すなわちそれをみずからの主義、精神とすることを意味しています。「博愛主義」も「博愛精神」も、主語は人間のみならず、社会や国家、組織なども対象となります。

【文例】

  • 彼は若いころから博愛主義で、「国境なき医師団」に志願したのも頷けるよ。
  • 人種差別をめぐる論争が闘争にまで発展しつつあるが、博愛精神で解決できることを祈りたい。
  • 当組織は、博愛精神をもって設立されました。

「博愛」の類語

「平等愛」

平等愛(びょうどうあい)は、すべてを平等に等しくみなし、愛するという、「博愛」とまったく同じ意味をもつ類語です。とはいえ、フランス革命の標語としても広まった「博愛」にくらべると、使われる頻度は少ないといえます。

【例文】西欧では、さまざまな人種の子供を養子として迎えるケースも多く、平等愛の発露のひとつと考えられる。

「友愛」

友愛(ゆうあい)は、狭義では友人間の愛情という意味で使われる場合がありますが、英語のfraternityの訳語としての解釈では、兄弟姉妹、友人、家族、さらに人類みなひとつの家族とみなす愛という意味に広がります。

「博愛」の英訳もfraternityであることから、この二つが同じ意味をもつ言葉であることがわかります。ただし、「友」という言葉で狭義の友情愛のほうで理解されやすいこともあるため、「等しく人を愛する」という意味で使う場合は「博愛」を用いたほうがよいでしょう。

【例文】言語や宗教が異なると互いの理解には時間がかかるが、友愛の精神で向かい合えば壁はなくなるだろう。


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