「書き入れ時」の意味とは?
「書き入れ時」(かきいれどき)は、企業や店舗などにとって最も売上が多く、利益が出る時期のことです。
「書き入れ」は、経理担当者がひんぱんに帳簿に記入をしている場面を描写しています。商売が繁盛して増えた売り上げを、忙しく帳簿に記録している様子から、「書き入れ時」という言葉ができたと考えられます。
誤字に注意!
「書き入れ時」を「掻き入れ時」と誤表記する例もあり、注意が必要です。「掻き入れ時」と間違えてしまうのは、売上や利益を自分たちの方に「掻き入れる」(手や道具を使って引き寄せる)という意味にとらえているからだと考えられます。
日本には縁起物の「熊手(くまで)」を飾る習慣があります。熊手は幸運や金運を「掻き集める」象徴であり、商売繁盛を期待するところから、このような誤用が生まれたのではないでしょうか。
「書き入れ時」の使い方
「書き入れ時」が使われるのは、企業や商店であれば商品が最も売れたり、サービスが最も利用されたりする時期をいいます。農業などの生産者であれば収穫などが最も多い時期を指す場合もあるでしょう。
「書き入れ時」を使った例文
- 旅行関係の企業は、年末年始やゴールデンウイークなどの長期休暇が書き入れ時だ。
- おもちゃのお店は、年末のクリスマス商戦の時期が書き入れ時で忙しいんだって。
- 年末というと必ずテレビでアメ横の風景が流れるが、食材を買い求める人などでごった返す町の様子は、いかにも「書き入れ時」という感じがする。
- 親戚のみかん農園は冬場が書き入れ時だということで、手伝いを頼まれた。
- 不動産会社の書き入れ時は、引っ越しの多い新入学や新入社の時期や人事異動がある時期のように思える。
- 税理士事務所が書き入れ時を迎えるのは、個人の確定申告の準備や提出をする1月~3月だけではない。11月~12月の年末調整の時期もかなり大変だ。
「書き入れ時」の類語:繁忙期
「繁忙期」(はんぼうき)とは、特に仕事が忙しい時期をいいます。「繁忙」は、仕事や用事などでとても忙しいという意味です。
例えば、来客や発注が多くてひっきりなしに仕事が舞い込む状況、サービスの利用者が多く休む間もない期間をいいます。「書き入れ時」とよく似た状況ですね。
【例文】
- 繁忙期につき、短期のアルバイトを募集しています。
- 繁忙期にホテルの予約をしたら、高めの料金設定だった。
「書き入れ時」と反対に近い表現:閑散期
「閑散期」(かんさんき)は、仕事が少なく比較的暇な時期をいいます。「閑散」とはひっそりと静まり返っている様子を表します。ここから、暇で手持ち無沙汰である、企業や店舗などで客が少なく仕事がないという意味になりました。「書き入れ時」とは真逆の状況ですね。
【例文】
- 閑散期に有給を長めに取って、遠出をしてくるつもりです。
- 確定申告期間が終わっても、顧客の法人の決算業務が控えています。会計事務所の閑散期は具体的にどの時期であるか、非常に分かりにくいですね。
帳簿付けが元となった言葉
「書き入れ時」のように、帳簿付けをしている様子が元となった言葉を紹介します。
赤字・黒字
「赤字」(あかじ)、「黒字」(くろじ)は、単に赤や黒のインクで書いた字を表す場合もあります。しかし、帳簿付けをする際の「赤字」と「黒字」は特別な意味を持っています。
まず「赤字」の場合は、不足した金額を赤色のインクで書き入れるところから、利益が少なく損失がある場合をいいます。収入よりも支出が多く、マイナスであるということです。
反対に「黒字」の場合は、収入が支出を超過した場合に帳簿書類に黒字で書き入れます。利益が出ていることになり、儲けがあることを表しています。
【例文】
- 各社の決算書類を閲覧して、黒字の企業の株を購入することにした。
- 今月も赤字だった。コスト削減のために売上が少ない店舗を閉鎖するつもりだ。
※ちなみに、文章の校正をした際の記号や文章を「赤字」という場合も。修正を朱筆で入れることから来ています。
帳尻を合わせる
「帳尻を合わせる」とは、もともとは『帳簿の「尻」』、帳簿で最終的な計算した決算の結果をいい、収支が合うようにしたことをいいました。派生して、最終的に物事のつじつまが合うように調整するという意味で使う言い回しです。
【例文】
- 百円単位で誤差が出ていたが、文房具にかかった費用の記入漏れがあった。決算で無事に帳尻を合わせることができた。
- 母に嘘をついたのがばれそうになったが、友達に口裏を合わせてもらい、どうにか話の帳尻を合わせた。