「重畳」とは?意味や使い方をご紹介

「重畳」という言葉をご存じでしょうか?「それは重畳」といった言い回しがありますが、「昔ながらのしっかりとしたつくりの畳」についての話ではありません。昨今では耳にする機会の少ない言葉、「重畳」ついて意味や使い方をご紹介します。

目次

  1. 「重畳」とは?
  2. 「重畳」の字義
  3. 「重畳」の使い方
  4. 「重畳」の類語
  5. 「重畳の理」

「重畳」とは?

「重畳」は「ちょうじょう」と読みます。文語ではタリ活用の形容動詞、口語では名詞として機能する言葉で、意味は以下の二つです。

  1. 幾重にも重なること。
  2. この上もなく満足なこと。とても喜ばしいこと。(感動詞的にも用いる場合もある)

「重畳」の字義

「重畳」の意味をより理解するために、構成する漢字の意味をひとつずつ考えてみましょう。

「重」の字義

「重」という漢字は、音では「ジュウ・チョウ」、訓では「え・おも-い・かさ‐ねる・かさ-なる」などと読みます。また、字義は以下の通りです。

  • めかたがおもい。おもさ。
  • 程度がはなはだしい。ひどい。
  • おもんじる。大切にする。
  • (雰囲気などが)おもおもしい。
  • かさねる。かさなる。
  • え。[※かさなったものを数える語]

「重畳」という熟語の中で用いられている「重」の漢字は、下から二番目の「重なる」という意味を表しています。

「畳」の字義

「畳」という漢字の音では「ジョウ」など、訓では「たたみ・たた-む」などと読みます。また、字義は以下の通りです。

  • たたむ。かさねる。かさなる。
  • 折りかさねる。折りたたむ。
  • たたみ(い草で出来た敷物)。じょう[※たたみを数える語]。

「重畳」においての「畳」は、もちろん一番目の「かさなる」という意味です。

「重」+「畳」

ここまでの説明から、「重畳」という熟語は、「かさなる」という意味を持つ二つの漢字を用いることで、意味を強める構成であることが分かるでしょう。

「重畳」の意味2「この上なく満足なこと」については、「良いことが重なる」という意味から派生したとされています。

しかし、一方では「昔は高価なものであった畳を重ねて用いることができる=喜ばしい」となったという説もあります。この場合は、「畳」が敷物の「たたみ」を表す漢字として機能することになりますね。

「重畳」の使い方

1.幾重にも重なること

1の意味の「重畳」は、山脈や雲、電波、信号などの物理的なものだけでなく、物事や言葉などにも用いられます。

【例文】

  • 先日の地震で、その山道は重畳たる岩や倒木などで塞がっていた。
  • 現在のテレビ放送では音声解説放送が重畳される場合もある。
  • 「盆と正月が一緒に来たよう」は、忙しさ、または、めでたいことが重畳することの例えだ。

一番目の例文は形容動詞としての用例です。全体としては口語文なのですが、「重畳たる」という文語的な表現を含んでいます。

2.この上もなく満足なこと

2の意味の「重畳」は次のように使います。

【例文】

  • ご無事で何より重畳です。
  • 本国からの知らせを読んだ将軍は、「それは重畳」と喜びの声を上げた。

上は「ご無事で本当に良かったです」を、やや改まった形で表現した文です。「何より重畳」は、「大変けっこう」に置き換えられます。また、下の「それは重畳」は「実にありがたい」という、喜びを表すときによく用いられる言い回しです。

文学作品における「重畳」の用例

下の二つの例は文学作品からの引用です。上の文は「重なる」の意、下は「喜ばしい」の意で「重畳」が使われています。「重畳」という言葉はやはり少し時代がかった表現によく似合いますね。

槍ヶ嶽(やりがたけ)蝶が岳(ちょうがたけ)など峰巒(ほうらん:ともに「峰」のこと)重畳して長く飛騨、越中、越後の境に亘り ~[後略]~
<木下尚江『良人の自白』より>
「あすの喜び、お家の為にも重畳じゃ」
<坪内逍遥『桐一葉』より>

「重畳」の類語

「重層」

「重層(じゅうそう)」とは、「いくつもの層になって重なること」を意味する言葉です。「幾重にも重なる」という点において「重畳」の類語となります。

【例文】

  • 古くから多民族が交流したこの国では、実に重層的な文化が育まれている。
  • 「楼閣(ろうかく)」とは、重層の建築物のことを指す言葉である。

「十重二十重」

「十重二十重」は、「とえはたえ」と読みます。これも「幾重にも多く重なること」という意味ですから、「重畳」の類語です。

【例文】

  • 人気ドラマのロケとあって、見物人が十重二十重に取り囲み、大変な騒ぎになっていた。
  • ~[前略]~ 屋根も、軒下の流も、その屋根を圧して果しなく十重二十重に高く聳ち(たち)、遥に連る雪の山脈も、 ~[後略]~
    <泉鏡花『雪霊続記』より>

「重畳の理」

「重ね合わせの理」という名前の方が一般的なようですが、電気回路に関する計算法に「重畳の理(ちょうじょうのり)」と呼ばれるものがあります。

【重畳の理】
複数の電源を持つ電気回路では、流れる電流の強さなどの計算が複雑になりがちです。そこで、電源ごとに分けて考えて、ひとつひとつを別な回路として電流の計算を行い、最後にそれらを合算します。これが「重畳の理」と呼ばれる計算法です。

それぞれの回路の電流の数値を、最後に重ねるので「重畳」という表現はぴったりですね。


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