「もやもや」の意味
「もやもや」には、次のように複数の意味があります。
- 不確実なさま。はっきり区別がつかない様子。
- 頭の動きが鈍っていたり、気分・雰囲気などが重苦しかったりするさま。思いわずらって、心がふさぐさま。
- 色情がむらむらと起こるさま。
- 草・毛などが乱れて茂っているさま。
- 湯気や煙などが立ち込めてあたりがぼんやりするさま。
- ごたごた。もめごと。
このうち、現代でよく見聞きするのは1,2,5の意味に限られていますので、これらの意味を基軸として覚えておくとよいでしょう。
成り立ちの考察
「もやもや」は、少なくとも上記1の意味は、疑問と推量を表す助詞、「も」と「や」が繰り返されてできたと考えられています。
つまり、物事が複雑にからまりあって分別がつかなくなり、「~ということだろうか?」「いやこうかもしれない」と反復して葛藤している様子であると考えれば、それぞれの意味はつかみやすくなりますね。
その一方、「湯気が立ち上ってぼんやりする様子」(5の意味)の表現から、1~3の意味に転化したという連想も無理がありません。いずれにせよ、「不明瞭な様子」を指している点はすべての意味に共通といえます。
「もやもや」の使い方
「もやもや」は、多くの場合、「頭がもやもやする」のように、頭がうまく働かず心情・思考・気分などがぼんやりする、悩みごとが多すぎて気持ちがふさぐさまなど、人間の精神的状態を指して使います。擬音語にも近い性質があります。
感覚的な言葉ですので、「もやもや」の原因は人それぞれですが、基本的には、うまく言葉にならない漠然とした心情の形容、納得いかない気持ちや不安の表現など、不愉快で嫌な気持ちを表す使い方が大半です。
また、物理的な対象としては、湯気・煙・霧・靄といったものが立ち込めて視界が曖昧になる様子も、「もやもや」と呼べます。現代語の範囲では、これらの他に「もやもや」という言葉が使われる例は稀です。
例文
- 彼が立てた旅行計画は何だかもやもやしていて、このまま任せておくのは不安がある。(不確実)
- 心理カウンセラーに悩みを話したら、胸に抱えていたもやもやがきれいに晴れていった。(気分などの重苦しさ)
- わからないままの問題を放置したまま眠ることに彼はもやもやとし、夜にもかかわらず父親に質問に行った。(気分などの重苦しさ)
- 夏の早朝、河の近くはもやもやとした霧に包まれていた。(あたりがぼんやりする)
「もやもや」の類語
「もやもや」の類語を、「物事がはっきりしない様子」と、「不愉快で嫌な気持ち」の2つの観点からご紹介します。
「物事がはっきりしない」という観点から
- ぼんやり
- 茫々(ぼうぼう)
- 朦朧(もうろう)
- 曇り
これら以外にも、「鮮明さ」を否定する「不鮮明」「不透明」「定かではない」といった言葉も、「もやもや」の類語として使用可能です。
「不愉快で嫌な気持ち」という観点から
どの言葉も、不愉快であるために気持ちが縛られてしまい、容易にはほどくことができない「もやもや」した様子が伝わってきますね。
「もやもや病」について
脳血管障害のひとつに「もやもや病」と呼ばれるものがあります。少々奇妙な名称ですが、国際的にも通用する正式な病名です。「ウイリス動脈輪閉塞症」とも呼ばれます。
はっきりとした原因はわかっていませんが、太い脳血管の終端部が何らかの要因で細くなり、血の流れが悪くなることで、一時的に手足が動かなくなるなどの虚血発作が起こります。日本人に多く発症し、そのうち半数が小児です。
「もやもや病」という病名は、病変した血管の周辺に代償的に形成される血管網が、X線で見た時に煙が立ち込めたように「もやもや」と見えることに由来します。