「労力」とは
「労力(ろうりょく)」には、①力を尽くすこと、骨を折ること、②労働力、人手という意味があります。ここでの「骨を折る」は、苦労すること、人の世話をすることといった意味の慣用句で、骨折することではありません。
「労」の字義
「労」は、旧字「勞」の教育漢字(小学校1年から6年までに習う漢字)です。「勞」の上の部分は、火を激しく燃やす、家が燃えるという意味を持っています。下に「力」を付けて、火を燃やし尽くすように力を出す、あるいは、消火に力を出すということを表しています。
このような「勞」の成り立ちから、「労(勞)」は、①はたらく、仕事をする(労働、勤労)、②つかれる(疲労、過労)、③ねぎらう、いたわる(慰労)といった意味を持つようになった漢字です。主に①の意味の「労」と「力」を組み合わせて意味を強調した言葉が「労力」ですね。
「労力」の使い方
「労力」は、自分のため、人のため、あるいは組織やチームのために自分の力を惜しまずに出す場合と、単に労働力を必要とするような場合に使われます。以下では「労力」の①と②の意味に分けて使い方をご紹介します。
①の意味「力を尽くすこと/骨を折ること」
- アイドルグループの熱狂的なファンは、労力を惜しまず、巡回公演を追いかけて全国を回っている。
- 完璧な仕事を目指すのは大事だが、ビジネスでは労力と時間を意識することも必要だ。
- 君は無駄なことに労力を使いすぎているんじゃないか。
- 社長は、ここ数か月新規ビジネスのために出資者を募ることに労力を費やしている。
②の意味「労働力/人手」
- 「お前の出したこの損失を取り戻すためにどれだけの労力が必要だと思っているんだ。本当にわかっているのか」と上司から激しく怒られた。
- 大阪城は、莫大な資金と労力を費やして建築された。
- あの震災の時には、世界中から多くのボランティアの人たちが、被災者の救助や医療など数々の場面で労力を提供してくれた。
「労力」の類語(①の意味)
【労】
「労(ろう)」は、すでに紹介したように、①はたらく、仕事をする、②つかれる、③ねぎらう、いたわるといった意味があり、①や②の意味で「労力」と同じように使うことができます。
【例文】
- 新規事業が軌道に乗って一段落したので、メンバーの労をねぎらうために一席設けることにした。
- 仕事を持つ妻は、忙しい中でも労をいとわず、老親の世話をしてくれた。
【辛労】
「辛労(しんろう)」は、大変な苦労や骨折りをすることです。「労力」にも努力の過程での苦労や骨折りという意味合いはありますが、「辛労」は、より激しい苦労・骨折りを表現するときに使います。
【例文】
- 父は長年にわたる辛労から健康を損ねて、50代半ばで亡くなった。
- テレビで見る被災者の方たちの表情には、一様に避難生活の辛労が表れていた。
【尽力】
「尽力(じんりょく)」は、文字通り、力を尽くすことです。努力する(した)、頑張る(った)といった意味合いでは「尽力」が一番よく使われてるのではないでしょうか。
【例文】
- 全国の自衛隊員が動員されて、地震現場の救助・復興に尽力した。
- 勝海舟と西郷隆盛の尽力によって江戸無血開城が実現したと言われているが、異を唱える歴史家もいる。
【出精】
「出精(しゅっせい)」は、精を出して物事に励むこと、一生懸命仕事をすることです。「精を出す」という表現がありますが、同じ意味ですね。年配の人なら知っている人もいるでしょうが、現在、「出精」が使われることはほとんどありません。
【例文】
- 父は定年退職後、貸農園を借りて野菜作りに出精している。
- クラブ活動で夜遅く帰宅すると、祖父から「運動だけでなく学業にも出精しなさい」と言われたが、よく意味が分からなかった。
「労力」の類語(②の意味)
【働き手(はたらきて)・男手(おとこで)・女手(おんなで)】
「働き手」は、よく働くもの、一家の家計を支える人、「男手・女手」は、それぞれ男の働き手、女の働き手のことです。
いずれも、労働力・人手という意味で使われています。なお、古典では「男手」は、男が書いた文字、漢字、「女手」は、女が書いた文字、ひらがなを意味しました。
また、シングルマザーやシングルファーザーが子育てをすることを「女手(男手)一つで育てる」と言いますが、その場合は、家計を支えるという意味も含めて一人で育てるということを表しています。
【例文】
- 感染症の影響で経済が停滞し、倒産失業が増えている中、働き手が職を失うと家族が路頭に迷ってしまう。政府は対策を講じなければいけない。
- 力仕事は男手に任せて、女手を集めて買い出しに行きましょう。