「紐帯」とは
「紐帯(ちゅうたい/じゅうたい)」とは、紐(ひも)と帯(おび)が転じて、①二つのものを結びつける役目を果たしている重要な要素、②地縁・血縁・利害など社会を形成している結びつきのことを意味しています。
世の中は、人と人、人と組織、組織と組織、国(地域)と国(地域)同士などがさまざまな理由で結びついています。その結びつける元となっているものを「紐帯」と呼んでいるわけですね。
「強い紐帯」と「弱い紐帯」
「紐帯」のうち、地縁・血縁・利害は「強い紐帯」と言われています。具体的には家族や親友など、ライフスタイルや価値観が似ている人との関係性を指します。
ほかにも出身校などによる学閥や組織内での派閥、あるいは企業間の系列・提携関係や国家間の条約なども「強い紐帯」に含まれます。
一方、趣味やサークル活動による結びつきなどは、構成員の自由意思が尊重される程度が大きいので「弱い紐帯」と言うことができるでしょう。いわゆる「知り合い」が、弱い紐帯の身近な例です。
「紐帯」の使い方
「紐帯」には、様々なものがありますが、「強い紐帯」と「弱い紐帯」に分けて例文をご紹介します。
「強い紐帯」の例文
- 現代の核家族化やライフスタイルの多様化が、家族の紐帯を希薄にしている原因の一つと言えるのではないだろうか。
- A部長とB課長は同期入社のライバル同士だったが、出世競争で差がついても二人の紐帯が弱まることはなかった。
- 新型ウイルスの蔓延(まんえん)による各国の対策の相違で、WHOによる国家間の紐帯がほころび始めているような気がする。
- 信者が信仰という強い紐帯で結びついた宗教団体は世界中に存在している。
- 業務提携によるA国企業との紐帯は、わが社のこれまでの発展を支えてきた。
「弱い紐帯」
- 突然B君が、大事な商談が入ったから明日の試合に出られないと言ってきた。楽しみにしていたのに、所詮、サークルの0B会なんて弱い紐帯なんだな。
- この囲碁クラブは、趣味という弱い紐帯で結びついた交流の場なんだから、厳しい会則なんか作ったらみんな離れてしまうよ。
「弱い紐帯の強み」とは
ビジネスの世界で「弱い紐帯の強み」という理論があります。この理論は、1973年にアメリカの社会学者マーク・グラノヴェッター氏が発表した社会的ネットワークに関する仮説です。
この理論で同氏は、新規性の高い価値ある情報は、家族や親友、職場の仲間といった社会的つながりが強い人々(強い紐帯)よりも、ちょっとした知り合い程度の社会的つながりが弱い人々(弱い紐帯)からもたらされる可能性が高いと主張しています。
例えば、強い紐帯は、環境・生活スタイル・価値観など共通項が多く、情報も重複しがちで、新規性のある情報を得ることは少ないといいます。一方、共通項の少ない弱い紐帯では、自分が知り得ない、新規性の高い有益な情報を得られる可能性が高いという仮説です。
「弱い紐帯の強み」に基づく応用例
グラノヴェッター氏は、「弱い紐帯」は、「強い紐帯」同士をつなぐブリッジとして、価値ある情報が広く伝達される過程で重要な役割を果たすと主張しています。そして、この理論は、企業の組織づくりや活動に大きな影響を与えています。
例えば、新規開発や技術革新推進を目指した組織横断的なプロジェクトチーム、異業種間の人材交流や採用などは、それによって多角的・多面的な情報交換が可能となり、同一組織内で取り組むよりも高い創造性が発揮されると言われています。
「紐帯」の類語
絆(きづな)
「絆」には、人と人との離れがたいつながりという意味があります。「家族の絆」「夫婦の絆」など、人間同士のつながりに使うことが多いのですが、「国家間の絆」や「平和への絆」という使い方もされることがあります。
連帯
「連帯」には、複数のものが結びついていることという意味があります。「連帯感」「連帯意識」といった表現で使われます。これとは別に、「連帯責任」のように、二人以上のものが同じ責任を負うことという意味も持っています。
パートナーシップ
「パートナーシップ」は、友好的な協力関係を意味します。「産官学のパートナーシップ」「地域と学校のパートナーシップ」といった使い方をします。また、個人や法人が共同出資して、事業を行う組織のこともパートナーシップと呼びます。