「希釈」の意味
「希釈」<きしゃく>とは、「ある溶液に溶媒を加えて濃度を薄めること」です。「溶媒」<ようばい>とは、ほかの物質を溶かす液体を指しています。この場合は液体に液体を溶かすわけですから、分量が多い方を言うのです。
身近な「希釈」
「希釈」いうと理科の実験を思い出して嫌になる人もいるかもしれません。しかし、私たちは日常生活の中でよく「希釈」を行っています。
たとえば、市販のめん汁には「ストレートタイプ」と「3倍濃縮タイプ」のようなものがありますね。この「○倍濃縮タイプ」は、水や湯で薄めて使うものです。
「3倍濃縮タイプ」であれば、総量に対してめん汁が1/3になるように希釈しますから、「めん汁:水」の割合は「1:2」。つまり、めん汁が50mlであれば水を100ml加えて薄めれば良いわけですね。
このほかにも、シロップや酒といった飲料や、農業や園芸で使う除草剤や液体肥料など、希釈して使うものは身の回りに沢山あります。こうして考えると、「希釈」という言葉に対するハードルも下がるのではないでしょうか。
「希」と「釈」の字義
「希」は音読みでは<キ・ケ>、訓読みでは<こいねが-う・まれ>と読みます。字義は複数ありますが、「希釈」の場合は「かすか・まばら」という意味です。
一方、「釈」は音読みでは<シャク・セキ>、訓読みでは<お-く・と-く・と-かす・ゆる-す>と読みます。こちらも複数の字義がありますが、ここでは「溶かす・薄くする」という意味です。
「希釈」の使い方
「希釈」は上で説明したとおり、溶液を溶媒で薄めることを指しますが、「薄める・薄まる」ことの比喩として用いられることもあります。
【例文】
- ルームスプレーは、無水エタノールと混ぜた精油を、水で希釈すれば作れる。
- エアブラシで使う塗料はその塗料専用の溶剤で希釈して使用する。
- 夜通し喋って話が尽きかけた頃、昇り始めた朝日が夜の闇を希釈していった。
- ネット上に溢れているのは、真実がデマや戯れ言で希釈された情報だ。
「希釈」と「混合」
「混合」とは
「混合」<こんごう>とは「いくつかの物を混ぜ合わせること・異なる性質の物が混ざり合うこと」という意味です。
「希釈」と「混合」の違い
先に例に挙げた、「めん汁を水で希釈する」ことは、結果として「めん汁に水を混合した」とも言えます。
「3倍濃縮タイプ」のめん汁の場合、「めん汁を水で3倍に希釈する(めん汁:水=1:2)」、または「めん汁と2倍の量の水を混合する(めん汁1+水2)」ということですね。
しかし、「希釈」は溶液を溶媒で薄めることを指します。よって、スパイスのような粉末同士を混ぜること、食塩を水に溶かすこと、接着剤のA液とB液を混ぜることなどは「混合」と言い、「希釈」と言うことは出来ません。
「希釈」の類語
「延ばす」
「伸ばす」<のばす>にはさまざまな意味がありますが、「希釈」の類するのは「水などを加えて薄める」という意味です。「この油性塗料は溶剤で伸ばしてから塗るタイプだ」「障子を貼るために糊を水で伸ばした」のように用いられます。
<のばす>は「延ばす」という表記もあります。この意味で用いる場合の表記を区別していない地所もありますが、「伸ばす」と書くのが一般的なようです。
「割る」
「割る」も複数の意味を持つ言葉ですが、「希釈」に類するのは「ある液体に別の液体を混ぜ合わせて濃度を薄くする」という意味です。「希釈」に極めて近いと言えるでしょう。
「シロップを炭酸水で割ってメロンソーダを作った」「芋焼酎はお湯で割るのが好きだ」のように使います。