「無慈悲」の意味
「無慈悲(むじひ)」とは、思いやりの心やあわれみの心がないこと。また、そのさまのことです。
この「慈悲」を「無」で打ち消すことによって、「無慈悲」の意味が成り立っています。
「無慈悲」の使い方
「無慈悲」は、人の言動や行為、性質に対して使われることが一般的でしょう。一方で、自然や時間など、一見心や自我を持たないようなものを主語にして使うこともあります。
人の行動などに対する「無慈悲」の例文
- 彼が無慈悲な人間だということは、職場のみんなが知っている。
- 借金取りの無慈悲な取り立てで、友人一家は夜逃げをしてしまった。
- せっかくのアドバイスを無視した彼女に対して、自業自得だと無慈悲な気持ちを抱いた。
- 怒りにかられたその男は、無慈悲にも庭の草花を踏みにじって行った。
人以外の「無慈悲」の例文
- 締め切りに追われている中、時間だけが無慈悲に過ぎて行った。
- 川の流れはますます激しくなり、やがて氾濫し、流域の家や畑を無慈悲にも飲み込んでいった。
- ドキュメンタリーの中では、急病人を搬送する救急車が、無慈悲にもたらい回しにされていた。
「無慈悲」の対義語
「無慈悲」の対義語は、「慈悲深い」です。「無い」の反対はふつう「有る」ですが、この場合は「深い(ぶかい)」が使われています。
「深い」は、多義語でさまざまな意味がありますが、ここでは名詞またはそれに準じる語に付いて接尾語的に使います。「~ぶかい」と読み、情け深い、疑り深いなどのように程度のはなはだしいことを表す意味で用いられています。
【例文】
- 彼は、偏屈でわからず屋の老人としてこの辺りでは有名だが、実は、とても慈悲深い人だということを私は知っている。
- 口元に笑みを湛えたアルカイックスマイルは、慈悲深いほほ笑みと言われている。
「無慈悲」の類語
「無情」
「無情(むじょう)」は、思いやりや慈しみの心がないことです。この言葉も人だけでなく他の事物や自然現象などにも使うことができます。また、仏教では、草木や石などのように精神や感情などの心の働きのないことやそのものを指し、非情とも言います。
「無情」という言葉から『ああ無情』というフランスのビクトル・ユゴーの小説を思い出す人もいるでしょう。原題は『Les Misérable(レ・ミゼラブル:悲惨な人々、哀れな人々)』ですが、初めて翻訳されたときに「噫(ああ)無情」と訳され、現在でも親しまれています。
虐げられた人々に対する思いやりや慈しみの心が、このタイトルに表れているのではないでしょうか。
【例文】
- 君が付き合っている男は、人の痛みを思いやることができない無情な人間だから、深入りするのはよくないよ。
- 仕事のミスで打ちひしがれている私に、無情の雨が容赦なく降り注いだ。
「冷酷」
「冷酷(れいこく)」は、冷たい態度や心持で思いやりのないこと、むごいことです。残忍冷酷や冷酷無惨といった四字熟語もあるように、文字を見るだけで、冷たさやむごさを感じさせる言葉ですね。
【例文】
- 海外では、冷酷非情なテロ行為によって、罪のない大勢の人たちが犠牲になっている。
- 彼女が演じるのは、自分の望みを叶えるためなら仲間を見捨てることもいとわない、冷酷なキャラクターだ。
「心ない」
「心ない(心無い)」は多義語ですが、「無慈悲」の類語としては、他人に対する思いやりや優しさがないとか情けがないといった意味が当てはまります。「心ない言葉」「心ない仕打ち」というように人の言動や行為に対して用いられます。
【例文】
- SNSが普及した現在、匿名の投稿者の心ない誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)で苦しんでいる人も少なくない。
- 親や周りの大人たちの心ない言動が、子どもの心を壊してしまうことがある。