「たわけ」の意味は?
「たわけ」は、漢字で「戯け」と書き、次のような意味があります。
- ふざけた言動や、ばかげたふるまいのこと。
- 1.のような行動をする人のこと。愚かもの。ばかもの。また、そのような相手をののしって言うときに使う言葉。
- 不倫で肉体関係を結ぶこと。姦淫(かんいん)すること。
「たわけ」使い方
- お盆に帰省したときに、親戚の子どもがはしゃいで墓地の中を走り回っていたが、おじいさんから「そんなたわけはやめなさい!」と一喝(いっかつ)されてやっと静かになった。
- 高校の廊下に校長先生の似顔絵が貼られていたが、校長先生は静かに「これを描いたたわけはだれかね?」と笑っただけで、とくに誰かを罰することはしなかった。
「たわけ」の語源
「田分け」が「たわけ」になったとする説
「たわけ」の語源は、「田分け(たわけ)」だとする説があります。「田分け」は、江戸時代の農民の相続の方法で、田や畑を分割して相続することですが、分地制限令によって制限されていました。
農民が、子どもの人数に合わせて田や畑を分割して相続させていくと、先に行くほど一人分の田や畑の面積は少なくなります。一般的には、子どもから孫、さらにひ孫と分ける人数が増えて行くからです。
一人当たりの田や畑の面積が少なくなれば、一人当たりの収穫量も減り、その家はどんどん衰えてしまいます。そのような愚かなことをすることを指して「たわけ」と言うようになったという説です。
動詞「たわく」が語源とする説
一方、「たわけ」は、「たわく」という動詞の連用形が名詞になっている言葉が語源とする説もあります。「たわく」は、「たわける」という動詞の文語形で、次のような意味があります。
- ふざけたり、ばかげたふるまいをすること。
- 常識的でない行動をすること(特に、みだらな行いをすること)。
【例文】
彼は、わざとたわけるような声を出してみんなの気を引いた。
なお、漢字で「戯ける」と表記したときには、「戯ける(おどける)」という読み方もあります。
「たわけもの」の意味は?
「たわけ」という言葉は、「たわけもの(戯けもの)」という熟語で使われることもあります。意味は、「たわけ」の2の意味「愚かもの。ばかもの」と同じです。また、人をののしって言うときに使われることも同じです。
【例文】
- 殿中(でんちゅう)で刀を抜くとはなにごと。このたわけものが!
- 打ったボールが、広場の横の家のガラスを割ってしまった。すぐにおじいさんが飛び出してきて「たわけもの!」と怒鳴られた。
「たわけ」を使った慣用句
「たわけ」を使った慣用句に、「たわけ(戯け)を尽くす」があります。意味は、普通でないほどにふざけたり、ばかげたふるまいをしたりすることです。
【例文】
若いころは、調子に乗ってたわけを尽くしていた。若気の至りではあったが、思い返すと恥ずかしく、穴があったら入りたいような気持ちだ。
方言としての「たわけ」
東海地方では、「たわけ」という言葉が現代でも使われています。「ば~か」「あほ!」といった感じですが、「ば~か」「あほ!」よりもきつい言い方で、ののしる意味が強くなります。名古屋弁では、「たわけ」よりも「た~け」や「たぁけ」に近い発音になるようです。
一説によれば、江戸時代以前には、京の言葉が岐阜経由で尾張に伝わった例が多く見られるということです。名古屋弁でよく使われる「たわけ」ですが、この説では、岐阜で使われていた言葉が、愛知(尾張)に広まったとされています。
岐阜弁や名古屋弁では、「たわけ」をより強くして「どたわけ」や「くそたわけ」という言い方もあります。また、名古屋弁で「たわけらしい」と言ったときには、「ばからしい」という意味で「たわけ」よりはソフトな言い方になります。