「孤独」とは
「孤独(こどく)」とは、ともだちや身内の人がいない独りぼっちのこと、語り合ったり、心が通じる人が一人もいなくて寂しいこと、あるいはその様子を言います。
「孤独」は、日常的によく使われる言葉ですから、多くの人がその意味を知っているでしょうが、元来の意味まで把握している人は少ないかもしれません。以下で、「孤独」の由来をご紹介します。
「孤独」の由来
「孤独」は、「鰥寡孤独(かんかこどく)」という四字熟語の後ろの二文字をとったもので、元来の意味は、身寄りのないものと年老いて子供のない独り者のことです。この「鰥寡孤独」は、中国の思想家・孟子が著した『孟子』の中の「梁恵王・下」の以下の記述に由来します。
読み:老いて妻無きを鰥(かん)といい、老いて夫無きを寡(か)といい、老いて子無きを独(どく)といい、幼にして父無きを孤(こ)という。この四者(ししゃ)は、天下の窮民(きゅうみん)にして告つぐる無き者ものなり
意味:歳を取って妻のいないのを「鰥」、歳を取って夫のいないのを「寡」、歳を取って子供のいないのを「独」、幼くして父(身寄り)がいないのを「孤」といって、この四者は天下の窮民(生活に苦しんでいる人々)で助けてくれるものがいない。
ここから「鰥・寡・独・孤」の四文字をとって、身寄りがなく生活に困窮しているさま、寂しく暮らす人やそのさまを意味する「鰥寡孤独」という四字熟語が生まれました。
「孤独」の使い方
- 有名大学を出て、一流企業に勤めたが、人付き合いが苦手でいつも孤独な日々を送っている。
- 彼女は、事故で家族をなくし、ほかに親戚縁者が一人もいなかったので天涯孤独の身になってしまった。
- 孤独を愛する彼は、いつも一人で行動し、誰とも交流しようとしない。
- 騒々しいので何事かと外へ出てみたら、管理人から隣のお年寄りが孤独死したと知らされた。
- 夏目漱石の作品には、「孤独」をテーマした作品が多いと国文学科の友人が言っていた。
- 彼は、大都会の真ん中で孤独感に苛まれて、いつしか心を病んでしまった。
「孤独」の類語
「孤立」
「孤立(こりつ)」は、独りぼっちで助けがないこと、他とのつながりがないことです。孤立無援(こりつむえん)という同じ意味の四字熟語もありますね。
「孤独」と「孤立」は似たような意味ですが、たくさんの人の中にいても、心が通い合う相手がいないというのが「孤独」、助けてくれる人がいない、つながりがないのが「孤立」といった点に違いがあります。
また、自分という観点から見た場合に、精神的な独りぼっちが「孤独」、社会的・対人的な独りぼっちが「孤立」という使い分けもできるでしょう。
【例文】
- ギャンブルと酒に溺れて離婚した彼は、家族からも親兄弟からも見放され、孤立無援の状態にだった。
- 上司の不正を暴こうとして、同僚や他部署の社員に声をかけてみたが、快い返事が得られないばかりか、自分がいつの間にか孤立していた。
「孤高」
「孤高(ここう)」は、他人と群れたりせずに孤立して自分の信念や志を守り貫くこと、俗世間から離れて一人高い境地にいることです。「孤高」の人は、一匹狼的な存在なので、相手からも距離を置かれることもあります。身近にもこんな人がいるのではないでしょうか。
「孤独」や「孤立」は、自分の意思とは関係なくそういう状態になることもありますが、「孤高」は、自ら望んでその状態に立って、受け入れているという違いがあります。
【例文】
- 孤高の天才とか孤高の人と呼ばれる人たちは、概して付き合いづらい人間が多い。
- 東京五輪のマラソンで銅メダルを獲得した円谷選手は、孤高のランナーと呼ばれている。
「寂寥」
「寂寥(せきりょう)」は、心が満たされずに寂しいこと、ひっそりとして寂しい様子のことです。「寂」は、ひっそりとさびしい、静かということですが、仏教では人が死ぬことを表します。
一方「寥」も、さびしいという意味がありますが、うつろなという意味もあり、「寂」と共鳴しているようなイメージですね。孤独なさびしさに包まれていると、寂寥感を感じることもあるのではないでしょうか。
【例文】
- 一人寂れた寺の庭を見ていると、耐え難い寂寥の思いに襲われた。
- 老後の孤独と寂寥感は、おそらく若者には理解できないだろう。