「マウントをとる」とは?
「マウントをとる(取る)」とは、「相手より優位なポジションに立つこと、自分の優位性をアピールすることで相手を威圧したり支配したりしようとする態度をとること」という意味です。「マウンティング」ともいいます。
物理的に相手の上に馬乗りになるような行為も「マウントをとる」と言えますが、近年では、人間の社会的・心理的な態度にまつわる言葉として使用されることが多いようです。
例えば、高級な腕時計をつけた人が、それより安価な時計を身につけている人を「そんな時計しか買えないの?」と嘲ったとします。このとき、その人は「腕時計の価値(の高さ)」で相手に「マウントをとろうとした」と言えるでしょう。
「マウント」とは?
「マウントをとる」の「マウント」は英語の「mount」であり、「登る、上がる」「乗る、載せる」「搭載する、取り付ける」などが主な意味です
「山」のことを英語で「マウンテン」(mountain)と言いますが、「mount」はこれと同語源です。「登る」が主要な意味ですが、「よじ登る」(climb)よりは「上から(覆いかぶさるように)重なる」というイメージを持ちましょう。
「マウントをとる」とはすなわち、相手の上に覆いかぶさるようにして自分の優位性をアピールするイメージです。(※「由来」の項もご参照ください)
「マウントをとる」の使い方
一口に「マウントをとる」と言っても、その方法・手段は個人によって異なります。多くは、社会的地位、財産の多寡、経験の有無など、「自分は持っているが、相手は持っていない」ものが「マウントをとる」ための材料となります。
もしくは、大声を出したり、態度で威圧したり、反論を許さず一方的に主張をまくしたてたりするなど、そもそも相手を平等に扱わない(見下す)態度を取ることも「マウントをとる」と言うことがあります。
基本的に「自分の優位性を確保する、アピールする」態度はすべて「マウントをとる」と呼べますが、多くは一方的かつ独善的な態度であるがゆえに、原則として常にネガティブなニュアンスを持つ点に注意しましょう。
例文
- 初めて恋人ができた友人が、調子に乗って「きみはいつ恋人をつくるの?」とマウントをとってくる。
- 偉ぶりたい同僚は、簡単な仕事しかしないくせに「こんなに仕事ができるのは部内で俺だけだよな」とマウントをとってくる。
- 部長ときたら、どんな話をしていても必ず遮って自慢話を挟んでくる。部下にマウントをとりたくてしょうがないんだろうな。
- ネット上では、年収やら学歴やらで相手にマウントをとろうとする人間が多いように感じる。
「マウントをとる」の由来・関連概念
「マウントをとる」の由来は格闘技の用語ではないかと考えられていますが、「相手の上に(精神的に)乗る行為」はもともと人間の動物的本能に根差していると分析することもできそうです。
ネット用語や、動物の習性を表す言葉としても「マウント」という言葉が登場しますので、由来への言及も含めて解説します。
格闘技の用語
床に仰向けに倒れた相手にまたがる体制のことを、格闘技の用語では「マウントポジション」と言い、この体制を取ることを「マウントをとる」と言います。
このポジションでは、上になった者が一方的にまたがった相手を攻撃できるため、絶対的優位性を確保しています。下になった者が逃れる方法もないわけではありませんが、かなり限定的です。
これが由来となって、社会的・心理的に絶対的優位性を確保すること、それをアピールすることも「マウントをとる」と言うようになったと考えられています。
ネット用語
恐らく上記の格闘技用語が由来と考えられますが、インターネット上の論戦で相手に対して優位性をアピールすることも「マウントをとる」と言います。
相手の詳しい素性を確認できないネット上のやりとりでは嘘が簡単につけますから、「マウントをとる」ことも簡単であり、一部ネット文化ではいまも当たり前のように日夜マウント合戦が行われています。
近年では現実世界でも使われる「マウントをとる」ですが、恐らくはこのネット用語から派生したものではないかとも考えられます。
動物が行う「マウンティング」
動物の世界では、ある個体が別の個体(あるいは物体)に乗りかかる「マウンティング」という行動が見られることがあります。
種や状況によってその意味は異なりますが、「優位性のアピール(による、群れの順列の決定)」「交尾の合図」を表すことが多いようです。
人間の「マウントをとる」行動も、「自分が優位だと示したい」動物的本能に根差したものであると言えるかもしれません。