「至高」の意味
「高みへ至る」と書く「至高」(しこう)。「至」の字には「この上ない点にまで達する」という意味がありますので、「至高」は「この上なく高いこと」を意味します。
「至宝」(しほう:この上ない宝物)や「至急」(しきゅう:この上なく急ぐ)といった言葉を見れば、「至高」が最上級の高みを意味することも理解されることでしょう。
なお、「至高」の「高いこと」は物理的(空間的)な高さではなく、物事の程度(価値など)が「他より優れていること」について言います。
「至高」の使い方
「至高」は、何らかのカテゴリにおいて頂点にあるもの、それ以上の等級がないものについて使います。その意味から純粋に考えると、「至高」と呼ばれるものは「ただひとつ」であり、並び立つものがなさそうです。
しかし、現実的には「この上ない点にまで達する」という「至高」の意義を完全に満たすのは大変困難です。なぜなら、「並ぶものがあるかも」「他にもっと上があるかも」という可能性を(未来も含めて)隙間なく検証することはほぼ不可能だからです。
そのため、「至高」という言葉には一定の「掛け値」があり、「一番上だと言いたいもの、その妥当性があるもの(それ以上のものがある可能性も認める)」といった価値の付与・表明や、最高度の程度を表す比喩としての運用が一般的です。
「神」の代名詞であることも
もし、一切の掛け値のない、比喩ではない「至高」を用いる対象がいるとしたら、文化にもよりますが、それは「神」(信仰の対象としての唯一神)が当てはまるかもしれません。
と言うのも、「神」こそはほとんどの文化において「それ以上はない存在」として位置づけられているからです。例えば、「至高の存在」や「至高の力」といった表現は、そのまま「神のこと」「神の力」を指すと考えて差し支えありません。
例文
- 新しいブドウの品種が「至高の一品」と銘打って売り出されていた。その味については、品評会において歴代最高評価が下されたという。
- 真夜中に酒を飲みながら食べるラーメンは至高だ、と友人は言うが、私は健康上の理由からその考えを否定している。
- 彼女の演技力は、至高の域に達している。もはや彼女に教えられる人間はいない。
- 好きな画家は人それぞれいるだろうけど、個人的にはゴッホこそが至高だと思う。
- 中世ヨーロッパにおいて、国王は神に等しい至高の存在として扱われていた。
「至高」の類語
「至高」の類語には以下のような言葉があります。
- 最上…いちばん上。いちばん優れていること。
- 最高…最も高いこと。第一であること。
- 至極(しごく)…この上ないこと。頂点に達すること。(など)
- 至上…この上もないこと。=最上=最高
これらの言葉にニュアンスの違いはほとんどなく、どれも同様に使うことができます。ただ、日常で誰もが多く使用する言葉は、意味が薄まる傾向にあります。大したことでなくても「最高」と言うようなケースを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
そうした際、「至高」「至極」など普段あまり見聞きしない語彙を用いることで、「本当にこの上ない」という程度を表すことができるかもしれません。
「至高」を英語で言うと?
「至高」という言葉を英語に訳したい場合には、「supreme」(最上の、最高位の、この上なく)が良いでしょう。
他に「ultimate」「best」「top」「greatest」など、「最高のもの」を表す言葉は多く存在しますが、「supreme」は「super」(~を超えて)を語源とすることもあって、これらの単語の中でも頭ひとつ抜けているイメージです。
例文
- He is by far the supreme being among the humans ever called a genius.(彼はこれまで天才と呼ばれてきた人間たちの中でも、至高の存在だ)
- I learned the supreme recipe from a top chef.(一流のシェフから、至高のレシピを教わった)