「優に」とは?
「優に」は、(ゆうに)と読む副詞です。漢字からは、「優しい」(やさしい)という意味を思い浮かべるかもしれませんが、「優に」は、感情を表す言葉ではありません。まずは、この漢字の字義を確認しましょう。
「優」は、音読みが(ゆう、う)、訓読みが(やさ・しい、すぐ・れる、ゆた・か、まさ・る、わぞおぎ、やわ・らぐ)。非常に多義的な言葉で、先に紹介した「優しい」「情け深い」ということを表すほかに、「すぐれている、まさっている」という意味も持ちます。
この「すぐれている、まさっている」という意味が反映され、「優に」は、十分なゆとりがあるさま、その数量、程度に達してなおそれ以上にあるさま、余裕で、ということを表します。
「優に」の使い方
「優に」は、「優に」の次に、数量やレベルを表す目的語、そのあとに「超す、超える、しのぐ」などの動詞を置いて使うことが一般的です。幅広く、数量、水準を対象として使われ、「優に三千人を超す聴衆」「優に二万人を超す軍勢」などの例が挙げられます。
また、「優に○○できる」という意味合いの言い回しもあります。この場合の例は、「大人が優に入れる穴」などですね。
「優に」の文例
- 生徒会長選挙で、女子に人気のA君の獲得票は、優に生徒の半数を越えた。
- 優に一万人をしのぐ軍勢が川向うに集結した。
- 子どもの時に、自分が優に入る穴を掘って秘密基地にした。
- 災害にそなえて建設した避難シェルターには、100名を優に収容できる。
- 帰国子女の大学生Aさんの英会話力は、英文科教授のそれを優に超えている。
- 人気のクレープ屋の行列はすごく、待ち時間は優に一時間を越えそうだ。
「優に」の類語
「楽々と」の意味と使い方
「楽々と」は、(らくらくと)と読みます。意味は、①苦痛や負担を感じることなく、ゆったりとして気楽なさま。きわめてゆとりがあるさま。②無理することなく、たやすく物事を行うさま。
辞書上の定義は「優に」とほぼ同じですが、実際に使う段になると、「優に」よりも制約が多くなります。「楽々と」は、苦痛や負担を感じない、ポジティブなマインドで使います。
たとえば、「待ち時間」は、なるべく避けたい苦痛なものと考える人も少なくないでしょう。ですから、上記の「待ち時間は優に一時間を越えそうだ」を「待ち時間は楽々と一時間を越えそうだ」と表現するのは少々違和感があります。
【文例】
- 鈴木君の大学入試直前模試の偏差値は、志望校のレベルを楽々と越えている。
- 50人は楽々と入れるレストランで打ち上げパーティーをした。
「易々と」の意味と使い方
「易々(安々)と」は、(やすやすと)と読みます。きわめてたやすく事を行うさま、容易に物事が進展するさま、を表す言葉です。
「楽々と」と同様に、ポジティブなニュアンスで使う副詞ですので、こちらも「待ち時間は易々と一時間を越えそうだ」のような使い方はできません。基本的に、人や動物、またはそれらによる行為を対象として用います。
【文例】
- 山田君は、中学生でありながら、高校生でも難しい数式を易々と解いた。
- 訓練を受けたイルカたちは、ショーの本番で高くかかげられた輪を易々とジャンプしてはくぐっていった。