「私情」とは?意味や使い方をご紹介

「仕事に私情をはさんではならない」と言い回しを聞いたことがあるでしょうか。実際に聞いたことはなくても、映画やテレビドラマなどで一度は聞いたことがあるかもしれません。ここでは、「私情」の意味や使い方を、社会との関連や関連語も含めてご紹介します。

目次

  1. 「私情」とは?
  2. 「私情」の使い方
  3. 「私情」と社会の関係
  4. 「私情」の類語・関連語

「私情」とは?

「私情」(しじょう)という言葉には、「個人としての情、個人的な感情」という意味と、「自分の利益だけを考える気持ち」という意味、二つの意味があります。

基本的には「わたくしごとの心情(のありさま)」と書く通りの意味ですが、上記の通り「個人の欲望、利益を叶えようとする気持ち」を指すこともありますので留意しましょう。

「私情」の使い方

「私情」は、それ単独で「個人の情」「個人の欲」を表すために使うことができます。それ以外にも、「~を挟む」「~を差し挟む」「~を交える」といった形で、「私情を持ち込むべきでない状況で、それを持ち込むさま」を指す使い方もよく見られます。

例えば、国民から権利を託された政治家が、「自分のお気に入りだから」という理由によって本来の手続きを無視して誰かを要職に引き立てたのなら、それは職務に「私情を差し挟んだ」結果といえるでしょう。

現代社会において、人間が「私情」を持つことそのものはもちろん否定されません。しかし、「私情」を社会的な業務の中に差し挟んだり、社会的役割と混同したりすることは、あまり歓迎されない傾向にあります。

例文

  • 野党は、〇〇大臣が打ち出した政策は私情に基づくものだ、と激しく糾弾した。
  • 〇〇捜査官は、その事件の捜査から外されることになった。身内の人間が被害が遭った場合、法執行官としてではなく、私情に流された行動に走ってしまう恐れがあるからだ。
  • 弁護士として働いていた彼女は、私情を挟むことなく、常に公正な視点から友人を弁護した。
  • 彼は仕事に一切私情を持ち込まないタイプで、既婚かどうかさえ誰にも話さなかった。

「私情」と社会の関係

上の例文からもわかるように、現代社会において「私情」は「できるだけ(仕事などに)持ち込まないほうがよいもの」とされる風潮があります。その理由は何でしょうか。

「私情」があまり歓迎されない理由

現代において、人間はほとんどの場面において「社会的に求められる役割を演じること」が求められています。なぜなら、個人単位では少し窮屈でも、皆で同じルール(法律など)に従うほうが、最終的に皆が受ける利益が大きいと見込まれているからです。

例えば、あなたの「私情」を最優先することが認められるなら、他の人の「私情」があなたを害する可能性も認めなければなりません(例えば、襲ってお金を奪うなど)。こうした状態では、誰もが闘争状態におかれ、人類社会の文化・文明の進化は行き詰ってしまいます。

そこで、「私情」をある程度抑制してでも、「社会人として」「大人として」「職務を全うする者として」の役割に順ずることが社会の模範とされているのです。この共同運営社会において「私情」を優先する思想が歓迎されにくいのは、道理といえるでしょう。

最近では少し変化もある

最近では、「自分らしく働くこと」や「仕事はあくまでもプライベートの生活を支えるための手段」といった考え方も生まれつつあり、「私情を挟むこと」の捉え方にも少しずつ変化もあるようです。

社会的役割に没頭することも大切ですが、それを自分自身の人生といかに両立するか、「私情」をうまいこと他の物事に差し挟む技術も重要となってきているのかもしれません。

「私情」の類語・関連語

私心

「私心」(ししん/わたくしごころ)とは、「自分の考え、私人(しじん)としての考え」「私欲をはかる心」という意味の言葉です。ほぼ「私情」の同義語と言ってよいでしょう。

【例文】

  • 政治の仕事に、私心を差し挟んではならない。
  • 彼は私心のない人で、職務に忠実だから信頼がおける。

利己心

「利己心」(りこしん)とは、「自分の利益だけを考えて、他人の迷惑を考えようとしない心」のことです。「私情」や「私心」から「欲を追い求める自分の気持ち」だけを抽出した言葉と言えます。

この意味の「利己心」「私情」「私心」に対応する反対語として、「公共心」(こうきょうしん)という言葉も一緒に覚えておきましょう。

【例文】

  • 彼は利己心の塊だ。
  • これはひとえに彼の利己心が招いた悲劇だ。


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