目次
「豚もおだてりゃ木に登る」の意味
豚は普通は木には登れませんよね。しかしそれでも「あなたなら登れるよ」などと言われたら気分が良くなって、木登りだって出来てしまうかもしれません。
つまり、「豚もおだてりゃ木に登る」は、「能力の低い者であってもおだてて気分良くしてやれば、能力以上に働くこと」の比喩として使われる言葉です。
「豚もおだてりゃ木に登る」の使い方
- 彼は豚もおだてりゃ木に登る人なので、先輩に良いように使われている。
- うちの子供は反抗期を迎えているが、元々豚もおだてりゃ木に登るタイプなので、褒めればすぐに機嫌がよくなる。
「豚もおだてりゃ木に登る」の由来
「豚もおだてりゃ木に登る」の由来は、昭和20年代から使われていた言い回しだといわれています。
この言葉が広く世に浸透した背景には、1977~1979年に放送された人気アニメ『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』があります。この言葉は、アニメの中で毎回セリフとして使われていました。
そのため視聴者の中には本作が語源と思っている人もいるようです。しかし、本作で総監督を務めた笹川ひろしさんは、子供時代に故郷で聞いたこの言葉をアニメの中で使ったと話しています。
「豚もおだてりゃ木に登る」の英語表現
「豚もおだてりゃ木に登る」の英語表現はいくつもありますが、たとえば、"Even a pig climb up a tree when flattered."のように表現できます。
「flatter」は「お世辞を言う」「褒める」ことです。上記の例文を直訳すると「豚でさえ褒めれば木に登る」となり、「豚もおだてりゃ木に登る」と意訳できますね。
「climb up a tree 」ではなく、「can fly」(空を飛べる)を使っても同じ意味になります。どちらにおいても、指しているのは「豚には不可能なこと」です。
「豚も煽てりゃ木に登る」に類する関連語
ここでは、「豚もおだてりゃ木に登る」のおだてる側の人の視点に立った言い回しをご紹介します。
【馬鹿と鋏は使いよう】(ばかとはさみはつかいよう)
切れない鋏も使い方によっては切れるように、馬鹿な者でも使い方によっては役立つことがあるという意味のことわざです。
【鶏鳴狗盗】(けいめいくとう)
取るに足らない者でも使い方次第では役に立つことを表す四字熟語です。鶏鳴とは鶏の鳴き真似で他人を欺く(あざむく)人、狗盗とは狗(いぬ)のように忍び込んでは物取りをする人のことです。ここでは、つまらぬことしかできない卑しい人を総じています。
「豚もおだてりゃ木に登る」の反対の意味の関連語
「豚もおだてりゃ木に登る」の反対の意味に相当する関連語には、タイプ別に次のような言葉が考えられます。
名人でも失敗する
【猿も木から落ちる】(さるもきからおちる)
その分野に長けた者であっても失敗することがあることを表す慣用句です。木登りが得意な猿であっても、ときには木から落ちることもあることを表しています。
【弘法にも筆の誤り】(こうぼうにもふでのあやまり)
その道の達人であっても失敗することがあるということわざです。弘法大師のような書道の達人であっても、書き損じることはあることを指しています。
おだてられていい気になると失敗する
【煽てと畚には乗り易い】(おだてともっこにはのりやすい)
他人におだてられるとその気になって失敗したり、とんでもないことになることへの戒めです。畚とは、縄や竹で編んだ網の四隅に紐を付けて棒に付け、そこに土砂や農産物などを入れて運ぶ道具のことです。江戸時代には、刑場に罪人を運ぶときにも用いられていました。
【馬に乗るとも口車には乗るな】(うまにのるともくちぐるまにはのるな)
うっかりうまい話に乗ってしまうと大変なことになるので注意するように、という意味です。口車とは、おだてや他人をだますための巧みな話を指しています。
不相応なことをすると失敗する
【鵜の真似する烏】(うのまねするからす)
自分の能力を考えずに他人の真似をすると失敗するという戒めの言葉です。鵜とは、湖沼や海辺と言った水辺に生息する鳥で、水に潜って魚を捕ります。鵜と烏はどちらも真っ黒な羽で覆われていますが、見た目が似ていても烏が水に潜ったら溺れてしまいますね。
【猿猴月を取る】(えんこうつきをとる)
身の程をわきまえずに行動すると災いを呼ぶことを表した慣用句です。猿猴とはサルの仲間の総称です。サルが、池に張り出した枝から手を伸ばして水面に映った月を取ろうとしたところ、枝が折れて水死してしまったという寓話に由来しています。