「俗物」の意味
「俗物(ぞくぶつ)」の意味は「明利にとらわれてばかりいるつまらない人物。無学・無風流な人」です。「明利」とは「名誉と利益」を表します。つまり何かしらの学を追究せずにそのものの名誉や利益を優先して行動すること、または人物を指した言葉です。
「俗」には一般のならわしや世間という意味の他に、「風流でないこと。卑しくて雅やかでないこと」という意味があります。「低俗」や「俗悪」などはこの意味で使われています。
「俗物」の使い方と例文
「俗物」は褒められた言葉ではなく、一般的には人を非難・軽侮する場合に使われます。これは、自分の名誉や地位にのみ固執する人物は世の中から嫌われる傾向があるためです。
小説やドラマなどでも、「この俗物が!」「俗物のくせに!」といった侮辱的なセリフが登場することがありますよね。
【例文】
- 彼のような俗物は、この絵画の投資価値にしか興味がない。作品の素晴らしさには、まるで感じるところがないようだ。
- 売り上げしか頭にない新社長の経営方針により製品の質が落ちた。俗物のような考え方に消費者が愛想を尽かしたのだ。
「俗物的」
「俗物」に接尾辞の「的」を付け、形容動詞としても用いられます。「俗物的」とは、「俗物のような性質のもの」という意味です。
【例文】
- 彼女は彼の俗物的な振る舞いには嫌悪感を示した。
- 父は、俗物的だと金儲けを非難しているが、今は金が必要なのもまた事実だ。
「俗物根性」
「俗物根性(ぞくぶつこんじょう)」とは、「金や名誉を一番に考える気質」を指す言葉です。ここでの「根性」は「その人に本来備わっている性質・性根」を表しています。
【例文】
- 名家の出の彼女は、彼の俗物根性を蔑んだ(さげすんだ)。
- 彼女が俗物根性の持ち主だと言うことは先刻承知だ。
「俗物」の類語
「凡俗」
「凡俗(ぼんぞく)」の意味は「世間並で高尚で無い様子、そのような人」と「煩悩にとらわれている様子、そのような人」です。ひとつめの意味は「無風流」、ふたつめは「俗人、凡人」ということですから、これらを踏まえると「俗物」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- 宗家は私のような凡俗にまで労りの言葉をかけてくださる素晴らしい方だ。
- 彼女が凡俗な存在へと成り下がってしまったのには理由がある。
- 彼の凡俗さにはあきれて言葉も出ない。
「下劣」
「下劣(げれつ)」の意味は「人柄や考え方が下品で卑しいこと」です。下品は無学・無風流と通じますし、「卑しい」は「欲望をあらわにする」という意味があります。以上のことから「下劣」は「俗物」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- 娘がどう言おうが、君のような下劣な人間に娘を嫁にやれない。
- 出世欲にとらわれた彼の行動はあまりに下劣で、誰からも相手にされなくなった。
「俗物」の関連語
「粋人」
「粋人(すいじん)」にはいくつかの意味がありますが、「風雅を好む人」という意味もあります。つまり、俗世間において趣味を究め風流を理解している人を指しているわけですね。これは、無風流で、物に対して美的関心を持たない「俗物」とは反対の意味と言えます。
【例文】
- 粋人と名高いあなたに作品をお褒めいただき、光栄の極みです。
- 粋人と言われる人には落ち着いた雰囲気の人が多いので、一緒にいて心地良い。
「俗物」の英語表現
「スノッブ(snob)」とは
カタカナ語の「スノッブ」は英語の「snob」に由来します。「snob」は「俗物」と訳されますが、ここまで説明してきた「俗物」とは少々ニュアンスが異なります。
「スノッブ(snob)」とは、簡単に言えば「似非(えせ)」です。上流階級や知識人を真似て身の丈に合わないことをする、地位が上の人には媚びるくせに下の人には威張り散らすといった、「通ぶる人」「気取り屋」(知識人気取り、紳士気取りなど)を指します。
英語でも、「wine snob」はワイン通ぶっている人を、「intellectual snob」は学者気取りを表しています。
「俗物」の英語表現
無風流や無学というニュアンスで「俗物」を英語にするときは、「snobbery(俗物根性)」や「snobbish(snobの形容詞)」が用いられることが多いようです。
【例文1】
- This snob! That picture was worth more than money.
- 訳:この俗物が!あの絵画はお金には換えられない価値があったんだ。
【例文2】
- It's as if you're a snobbish person who's going to continue to develop with profit first.
- 訳:利益を最優先に開発を続けるなんて俗物な君のやりそうなことだ。