「酩酊感」とは?
意味
「酩酊感」(めいていかん)とは、「お酒を飲んで、かなり酔っ払った感じ」という意味の言葉です。
酔いの度合いとしては中程度であり、「ほろ酔い」を超えるが「泥酔」(でいすい)ほどではない、という酔いの状態が「酩酊(感)」に当たります。
「酩」や「酊」の字について
「酩」や「酊」の字は、ともに「酒に酔っぱらうこと」という意味があり、「酩酊」は同じ意味の単語を重ねて一語とした「畳語」(じょうご)です。
これらの字が「酩酊」という熟語を作る以外に使われることはまずありません。そのような意味では、少々ユニークな言葉といえるかもしれません。
「酩酊感」の使い方
「酩酊感」は、そのまま「(かなり)酒に酔った感じ」という状態を言い表すために使うことができます。
具体的には、めまいがする、足元がふらつく、吐き気がする、呂律(ろれつ)がまわらない、理性や自制心が希薄になっていい気分になる、気持ちが大きくなって饒舌(じょうぜつ)になるなどの感覚・症状が「酩酊感」と呼ばれます。
基本的には「何となく良い感じ、酔いが気持ちがいい」というニュアンスで用いられますが、原理としては麻酔と同じで脳機能が麻痺している状態です。そのため、「酩酊感を覚える状態」を手放しで「良い状態」とは言えないでしょう。
「酒」が原因でない場合にも使える
「酩酊」は「酒に酔うこと」という意味ですが、「酩酊感」はあくまでも「そういう感じ」という感覚的な表現として、必ずしも酒を原因とせず主観的基準で用いることができます。
例えば、思いもしなかった幸運な報せを耳にしたときなど、身体がフワフワと宙に浮くような気持ちになることがあるでしょう。こうした感覚が「酩酊感」と比喩的に呼ばれることがあります。
ただし、「酩酊」はいつも良い感覚とは限りません。突然の不幸に襲われた時など、現実への理解が追い付かず、ふらふらとめまいを覚える「酩酊感」が引き起こされることもあります。
例文
(酒が原因)
- お気に入りのウイスキーを飲んでしばらくすると、心地よい酩酊感が彼を包んだ。
- 彼女は過去の失敗から飲酒量を厳しく自制していて、酩酊感を覚えるほどに酒を飲むことは絶対しない。
(酒以外の原因)
- その部族の伝統的なダンスと音楽は、見るものに軽い興奮と酩酊感をもたらす。
- その訃報を受け取ったとき、彼女はひどい酩酊感に襲われ、吐き気を催した。
「酩酊感」の正体と酔いの段階
お酒を飲むと、その主成分であるアルコールは胃腸の吸収を介して血液に溶け込み、全身に回ります。脳の血管に回ったアルコールは、その摂取量(濃度)に応じて脳の機能を段階的に麻痺させます。
アルコール摂取量に応じてどのような症状が現れるか、段階ごとに見ていきましょう。
爽快期・ほろ酔い期
酔いの初期は、大脳辺縁系など、理性や自制心を司る部位が麻痺しはじめることによって、いつもは抑えられている本能や感情が活発になります。これを「爽快期」ないし「ほろ酔い期」と言います。
自制心が薄れるわけですから、この段階では、いつもは言わないようなことを言ってしまったり、楽しい気持ちになり動作が活発になったりと、陽気な言行が見られるようになります。(お酒はほどほどに、とよく言われるのはおおむねこの段階までです)
酩酊期
さらに酔いが回ると、アルコールが小脳を麻痺させはじめます。小脳は運動や感覚を司る部位ですので、めまいやふらつきが発生し、呼吸にも異常が生じ始めます。これが「酩酊期」です。
小脳以外の脳の大部分もほとんど麻痺してしまっていますので、何度も同じことをしゃべったり、急に感情をむき出して怒りっぽくなったりと、理性が働いている普段とは大きく変わった様子が見られます。
泥酔期・昏睡期
「酩酊期」以上にアルコールが回ると、いよいよ脳の機能が全体的に麻痺し、自分が何をしているのか、どこにいるのかもわからず、言葉もめちゃくちゃになります。これが「泥酔期」、精神がまさしく泥のようになってしまうわけです。
意識があるうちはまだ良いですが、それ以上段階が進むと「昏睡(こんすい)期」と言い、意識が完全になくなってしまいます。最終的には呼吸を制御する部位までもが麻痺しますので、最悪の場合は死に至ります。
この段階はとても危険ですので、お酒を飲む際はできれば「ほろ酔い」まで、飲みすぎても「酩酊期」までに留めておきたいものですね。