「見越して」の意味
「見越して(みこして)」は「見越す」のサ行五段活用・連用形である「見越し」に、接続助詞の「て」が付いて構成されています。元となる「見越す」の意味は、大きく分けて次の2つです。
ひとつは「隔てている物を越して見る。物越しに見る」ことです。塀などの仕切りや道路や畑など距離を隔てる物の向こう側を見ることを表しています。
もう一つは「未来を推し量る。将来を見通す」ことです。時間を隔てた向こう側を見る、つまり、物事がこの先どうなるのかを考える・予測することを指します。
「見越して」は後者の意味で良く使われるため、こちらだけを覚えている人も多いかも知れませんが、前者の意味もあることを理解しておきましょう。
「見越して」の使い方
「物越しに見る」場合
- 居間の大きな窓を見越して、庭に咲き誇るバラを楽しんだ。
- 堤防を見越して海を臨むと、海面がキラキラ光っていた。
- 塀の上から通りを見越していると、男が慌てた様子で走って行った。
「未来を推し量る」場合
- 現在、世界で活躍している彼は、子供の頃から将来を見越して英語の勉強をしていた。
- 酔っ払った上司が説教しはじめるのを見越して、飲み会から早々に退散した。
- 繁忙期の混雑を見越して、早めに新幹線のチケットを予約した。
「見越して」の例文を英語表現で
「物越しに見る」場合
「見越して」を「物越しに見る」という意味で使う場合は、「over the wall」(壁を越えて)のように「over ~」で表現するのがシンプルでしょう。また、「look over the field」(畑を見越して)のように「look over~」という表現も使えます。
【例文1】
- The king living in the palace saw the scenery of the city for the first time over the stone walls in the garden.
- 訳:宮殿に住む王様は庭の石垣を見越して初めて街の風景を目にした。
【例文2】
- Looking over the fields, I noticed that a racoon dog was wondering in the woods.
- 訳:畑を見越すと、林の中に一匹の狸がうろついているのに気づいた。
「未来を推し量る」場合
「将来を見越す」のように「見通す・予測する」といった意味で使う場合は、「in anticipation of~」(~を見越して・予想して)と訳します。他にも「in expectation of~」(期待して)や「look ahead to~」などを用いることができます。
【例文1】
- The old couple prepared sweets in anticipation of of their grandchildren coming.
- 訳:老夫婦は孫たちが来るのを見越して菓子を用意した。
【例文2】
- I decided to give him a lot of support in expectation of his research results.
- 訳:私は彼の研究成果を見越して多額の援助を行う事に決めた。
【例文3】
- Looking ahead to the future pension problems, my son started saving money.
- 訳:将来の年金問題を見越して、息子は貯金を始めた。
「見越す」と「見込む」「見通す」
「見越す」と「見込む」
「見込む」とは、①「望みがある。期待する」、②「予想する。勘定に入れる」、③「執着する。じっと見る」などの意味を持つ動詞です。
【例文】
- 意味①:外出自粛によってかなりの売り上げダウンが見込まれる。
- 意味②:商品の開発力などの将来性を見込んでA社の株を買った。
- 意味③:蛇に見込まれた蛙のように、動けなくなってしまった。
意味①と②は「見越す」の未来を推し量るという意味に似ていますね。しかし、「見越す」には予想の善し悪しというニュアンスは含まれないという点においては異なります。
「見越す」と「見通す」
「見通す」とは、①「最初から最後まですべて見る」、②「何かに遮られることなく遠くまで見る」、③「人の心中や物事の成り行きを予測する」、という意味です。
【例文】
- 意味①:3時間を超える大作映画を最後まで見通した。
- 意味②:展望台に上がると、遠くの海まで見通すことができた。
- 意味③:コロナウイルス騒動で、経済動向を見通すのが難しくなった。
意味③は、「見越す」の未来を推し量るという意味に通じます。