「よぎる」の意味
「よぎる」(漢字表記:「過ぎる」または「過る」)とは、「前を通り過ぎる、通り越す、通過する」あるいは「横切る」という意味の言葉です。
これらの他に「ついでに立ち寄る」「よけて通す、避ける」という意味もあるのですが、現代ではあまり使われていないため、本記事では上記のマーカーを引いた意味にしぼって解説を行います。
古くは清音で「よきる」と発音されましたが、現在では濁って発音するのが一般的です。
基本はひらがな表記でOK
「よぎる」は、古典文学などの世界を除いては一般にひらがな表記されます。「過ぎる」「過る」という表記では「すぎる」の意と勘違いされてしまうという側面もあるのでしょう。
なお、「よぎる」と「すぎる」の違いについては、後ほど解説します。
「よぎる」の使い方
「よぎる」は、何かが目の前を通過していくさま、横切るさまを指して使います。「ネコが目の前をよぎった」のように物質的なものにも使われる一方、比喩的な用法も多くみられます。
例えば、「(直感や記憶などが)頭をよぎる」「(心配事や情念などが)胸をよぎる」などは、ほとんど定型表現のように使われています。
「よぎる」ものはあくまでも「通過していくもの、偶然に自分の前を横切ったもの」であるため、「一瞬」「突然」「その時、ふと」などのように「不意」のニュアンスを表す言葉がしばしば前に置かれます。
例文
- 突然、小さな人影が目の前をよぎり、運転手は慌ててブレーキを踏んだ。
- 別れを告げたその一瞬、彼女の眼に悲しみの色がよぎったような気がした。
- その時、彼の頭に邪(よこしま)な考えがよぎった。すべてを秘密にしておけば、誰も自分のミスに気づかないだろう。
- 「ここから飛び降りてしまえばどうなるだろう」なんて考えが、最近よく胸をよぎる。
「よぎる」と「すぎる」の違い
「よぎる」と「すぎる」はどちらも「過」の字を使い、意味もよく似ています。辞書によっては「すぎる」の中に「よぎる」という意味を含んでいるものもあるほどです。
ただし、実際の運用上においては意味に少々違いがあります。「よぎる」が「今まさにそこを横切っている」意味合いであるのに対し、「すぎる」は「自分と深いかかわりをもたないまま過ぎ去る」意味合いを持っているのです。
つまり、どちらの言葉も「何かが通り過ぎていく」さまは一緒なのですが、「よぎる」はその何かに「あれ?」と違和感を覚えて心にとらえ、何事かの意味や情念を喚起させられています。
「よぎる」が「すぎる」の過程に含まれていることは確かですが、何かが「よぎる」と認識する時点で、それは「すぎる」だけのものではなくなり、自分と何らかのかかわりを持つようになると考えてよいでしょう。
「よぎる」を英語で言うと
「よぎる」を英語で言いたい場合は、「cross」(交差する、横切る)か「pass」(通る、通り過ぎる)が適当ですが、「pass」はどちらかというと「よぎる」より「すぎる」のイメージです。
「cross one's mind」とすると「心に浮かぶ(=考えなどがよぎる)」という比喩的な使い方もできますので覚えておきましょう。
例文
- A figure passed in front of him, and he felt familiar.(目の前をよぎった人影に、彼は見覚えがあるような気がした)
- At the moment, a dengerous but useful idea crossed his mind.(その時、危険だが有用なアイディアが彼の脳裏によぎった)