「寛いで」とは?
「寛いで」は(くつろいで)と読み、動詞「寛ぐ」の連用形「寛ぎ」のイ音便形に、接続助詞「で」がついて成り立った言葉です。日常会話でも比較的よく聞かれますが、「寛」の読み方はやや難しいかもしれません。まずは、「寛ぐ」について解説しましょう。
【寛ぐ(くつろぐ)】
- ゆったりとのびのびした気持ちになる。心身をのんびり休める。
- 窮屈な姿勢や身なりをやめて、楽なかっこうになる。
- 能楽で演者が観客に背を向け、登場人物がその場面にいないことを示す所作を意味する。
- ゆるむ。
- ゆとりや余地ができる。
意味の多くは、ゆったりとリラックスする状態を表していますね。意味3は能楽の専門用語で、4と5は現代日本語では用いられていません。したがって、現在使われている「寛いで」は、上記1と2の意味によるものです。
「寛いで」の意味
「寛ぐ」における1と2の意味を踏まえて、ここで改めて「寛いで」という言葉を解釈してみましょう。
精神的なゆとりを表す場合は、のびのびした気持ちで、心身をのんびり休めて、気兼ねなくふるまってなど。身体的なゆとりを指すのであれば、ゆったりとした姿勢で、楽な身なりや衣服でのびのびとしてなどと表すことができます。
「寛いで」の使い方
上述したように、「寛いで」いる状態は、心と身体の両方について表すことができます。また、環境など周囲の変化でも、能動的に楽な姿勢や服装を意識した場合でも、状況を問わず使えます。
加えて、影があるから光がある、というと大袈裟かもしれませんが、緊張状態や多忙な日常などがあってこその「寛ぐ」であることに留意しましょう。
たとえば、小さな子どもの日常と言えば、一般的には食べて寝て遊ぶことですね。となると、幼児が寛いでいる、という表現はやや不自然な感じがします。とはいえ、習い事いっぱいの子どもが、休日にのびのびと過ごす姿があれば、それは「寛いで」いると言えるかもしれません。
文例
- 担当した販促プロモーションが無事に終わり、久しぶりに寛いでお酒を楽しめた。
- パーティーで着慣れない着物をきてクタクタになり、帰宅するなり寛いだパジャマ姿でソファでうたたねをした。
- 受験が終わってストレスから解放され、温泉で心身ともに寛いだ。
「寛いで」の語源
「寛いで」のもととなる「寛ぐ」には、複数の語源説があります。その真偽を判断するのは難しいですが、どの説からも、ゆったりと気分がほぐれるようなイメージが湧いてくるでしょう。
【語源とされる説】
- 「朽」に接尾語「ろぐ」:緊張しこわばった心を朽ちさせる。
- 「崩」に接尾語「ろぐ」:緊張しこわばった心を崩し柔らかくさせる。
- 「空」に接尾語「ろぐ」:空っぽという意味の「空(うつ)」ろぐで、安らぐ意味。
- 「くつわ」を外す:馬の口にはめて動きをコントロールするための馬具「くつわ」を外し、馬をやすませる。
「寛いで」の類語
「ゆっくりして」の意味と使い方
「ゆっくりして」は、動詞「ゆっくりする」の連用形「ゆっくりし」に接続助詞「て」で構成されています。
「ゆっくり」という副詞には3つの意味があります。
- 動作や行為などを時間をかけて行うこと、または時間がかかるさま。
- 時間にゆとりがあるさま。
- 心にゆとりがあるさま。
「寛いで」の類語としての「ゆっくりして」は、上記3の「心や気持ちにゆとりがある」という意味が該当します。
文例:卒業論文をやっと提出できたので、今日は家でゆっくりして過ごそう。