醍醐味の概要-語源
「醍醐味」(だいごみ)は、仏教の経典に出てくる「醍醐」が語源です。仏教では、牛の乳を精製する過程を5段階に分け、乳(にゅう)・酪(らく)・生酥(しょうそ)・熟酥(じゅくそ)・醍醐(だいご)と呼び、五味としています。
段階をふむほど美味で上質なものとなり、「醍醐」は最上の味・究極の味を持つものとされています。
醍醐味の意味・使い方
最上の味を持つ「醍醐」から転じた「醍醐味」の意味は大きく3つに分けられ、一般的によく使われているのは3番目の意味です。
- 醍醐の味、美味の最上のもの・最高の味わい
- 仏の最上で真実の教え(仏教用語)
- 物事の本当のおもしろさ、深い味わい、神髄
醍醐味の例文
- 海外旅行の醍醐味は、本場の食事が食べられることだ。
- お客さまに直接感謝の言葉を言われるのが、この仕事の醍醐味だ。
- イルカと一緒に泳いで、スキューバーダイビングの醍醐味を味わった。
- 読書の醍醐味といえば、経験したことがないことでも疑似体験できることだ。
- 時間をかけて完成図を作り上げたときに、ジグソーパズルの醍醐味を知った。
醍醐味の英語表現
醍醐味の英語表現は文脈により異なりますが、「もっともよい部分」「本当に面白い場面」といった意味合いを重視するとよいでしょう。ここではその一部を紹介します。
【例文1】
- 英文:The best part of traveling is enjoying the local cuisine.
- 訳文:旅の醍醐味は、郷土料理を楽しむことだ。
【例文2】
- 英文:The view from the top is the highlight part of mountain climbing.
- 訳文:頂上からの眺めは、登山の醍醐味だ。
醍醐味の類語
以下に紹介する類語のうち、複数の意味をもつ言葉は、醍醐味と似ている意味に絞って記載します。
【持ち味】
- 意味:人物や作品などが持つ独特の味わい・良さ・趣
- 例文:1等賞の作品は、作家の持ち味をいかした繊細な工芸品だった。
【興(きょう)】
- 意味:おもしろく楽しいこと、おもしろみ
- 例文:たくさんいる踊り子のなかで、彼女の踊りに興をそそられた。
【曲(きょく)】
- 意味:変わったおもしろみ
- 例文:綺麗な言葉だけが並んでいる、曲がない詩だ。
【味(あじ)】
- 意味:そのものに特有の優れた性質、物事の趣
- 例文:観衆は、彼の味のある歌声に魅了された。
醍醐味の雑学―醍醐寺・カルピス・乳製品
醍醐寺
世界遺産にも登録されている醍醐寺は、京都にある真言宗の寺院で、醍醐天皇とも関わりがあります。以下は、醍醐味が醍醐寺の名前の由来とされる伝えです。
醍醐寺の開祖の聖宝尊師が、ある山に登り山頂で郷愁を覚えていたところ、谷間を見ると、湧き水を飲んだ老人が「甘露。甘露。ああ醍醐味なるかな」と言っていました。
聖宝尊師が老人にこの地に寺院を建立したいと声をかけると、老人は地主神で、この地を差し上げ長く守護してあげると答えて姿を消したとされています。(醍醐寺公式サイト参照)
カルピス
カルピス株式会社が製造する「カルピス(CALPIS)」の名称は、五味である古代の乳製品が関係しています。「カルシウム」のカルと、サンスクリット語で熟酥を意味する「サルピス」のピスが名の由来です。
サンスクリット語で醍醐は「サルピルマンダ」のため、「サルピス」「カルピル」案もありましたが、語感の関係でカルピスになったとされています。
また、会社が初期のころに発売していた「醍醐素」は、カルピスの開発へと繋がったものです。(カルピス株式会社および関連サイトなど参照)
古代の乳製品
五味と呼ばれる古代の乳製品は、製法が不確かなため研究者による試作はありますが、現存していません。
一方、「蘇(そ)」と呼ばれる古代乳製品は現存していて、購入もできます。五味に出てくる「生酥」や「熟酥」と同一視する説もありますが、両者は違うものであるという説もあり、真実は不明です。
醍醐味は人により異なる
「旅の醍醐味」「人生の醍醐味」は、醍醐味の対象としてよく聞かれる言葉です。
「何が醍醐味なのか?」について、前者は郷土料理、名所観光、土地の人との触れ合い…、後者は人との出会い、自分で道を切り開くこと、仕事で成功すること、趣味を極めること…といろいろな返答が考えられるでしょう。
簡単に言えば「自分が本当におもしろいと思うこと」が醍醐味ですから、同じ体験をしても醍醐味と感じるか否かは人によります。醍醐味は人それぞれ違うということは認識しておくと良いですね。