「期す」とは?
「期す」には、二つの読み方があり、(きす)または(ごす)と読みます。それぞれ異なる意味がありますが、(ごす)は古典などに見かけられる程度で、現在では一般的な言葉ではありません。よって、今回は(きす)をメインに解説していきます。
「きす」
「期す(きす)」は、サ変動詞「期する」の文語形で、意味は以下の通りです。
- あらかじめ期限や時刻を定める。
- 期待する、予期する、ある目的が達成されるようにはかる。
- 心に誓う、約束する。
このように複数の意味があることから、「期す」だけで文章全体の趣旨を把握するのは難しいかもしれません。前後の文脈から意味を見極める必要があるでしょう。
「ごす」
「期す」(ごす)の意味は以下の通りです。
- 覚悟する。そうなるように期待する。よくないことを予期する。
- 決意する、覚悟する。
前述の通り、現代ではほとんど使うことがありませんので、今回は意味の紹介のみとします。
「期す(きす)」の使い方
上述したように「期す」は、前後に文を伴うことによって意味が明確になる言葉です。ここでは、上記3つの意味ごとに項目をわけ、代表的な使用例とともに使い方を解説していきます。
1.あらかじめ期限や時刻を定める
前もって期限などを決めるという意味で使う時は、「期す」の前に必ず期日、予定を示す言葉を置きます。また、「○月を期して~」のように、期限を決めてどうするのか、何をするのか、という部分も必須です。
とりわけ、ビジネスの場面において、期限や予定などは非常に重要ですから、「期す」の意味を正確に理解しておくとよいでしょう。
【文例】
- 当社は、2022年4月を期してロサンジェルス支店を開設する。
- 申請書の受付は、明日の午後三時を期して締切とする。
2.期待する・目的達成のためにはかる
「期す」を、「期待する」「予期する」「そうなるようにはかる」という意味で使う時も、具体的な内容を「期す」の前に記します。以下には、それぞれニュアンスが異なる文例を挙げてみます。
【文例】
- 親友との海釣りは鯛が6匹も連れた。再びの大豊漁を期して、翌月も海に繰り出すことにした。
- ここまで消費が落ち込むと、どの販売戦略が正解かは期しがたい。
- 5月末までに100%納品させて頂けますよう、万全を期す所存でございます。
3つ目の文例にある「~となるようにはかる」という用例は、社会人はぜひ知っておきたい言い回しです。「万全を期す」「正確を期す」など、完璧を目指す姿勢をアピールできるかもしれません。
3.心に誓う
決意する、約束するなどの意味で「期す」を用いる場合も、その目的語を前に置きます。
【文例】7月に開催されるピアノコンクールに、優勝を期して臨むことにした。
「期す」の類語
「期す」の類語は、「期す」そのものが多義的な言葉であることから数多く挙げられます。以下には、それぞれの意味ごとに類語を紹介します。
【意味1】「期日として」「予定として」など
文例:今回の特別プレゼントは、6月6日を期日として応募締切とさせて頂きます。
【意味2】「期待して」「~をはかって」など
文例:同窓会は300名が集い、大成功だった。再びの盛況を期待して、また来年も企画しようではないか。
【意味3】「決意して」「決心して」など
文例:甲子園出場の権利を得ることを決意し、野球部全員が過酷な練習に耐えた。