「安価」の意味
「安価」は「あんか」と読みます。この単語には「値段が安いこと」と「安っぽいこと」の二つの意味があります。「安い=質が悪い」とは限りませんが、「安価」という単語はそうした意味も含んでいるのです。
転じて、「安価な同情」などと使う場合は「安っぽい同情」、つまり、さして深い考えのない、いい加減な同情というニュアンスも見えてきます。
「安価」を英語で書く
「安価」は英語ではどう表すでしょう?
「値段が安いこと」「安っぽいこと」という場合は「cheapness(cheap)」です。日本でカタカナ語の「チープ」を用いるときは「安っぽい」という意味合いですね。
なお、「安価な同情」のように「いいかげん」「思慮の浅い」というニュアンスを表したいなら、「superficiality(superficial)」を用いてもよいかもしれません。
「安価」なワイン
銘柄や年代によって価格に大きな開きがあるワインは、食通がたしなむ贅沢なお酒の代表格でした。しかし、最近では「安価」で美味しいワインが流通するようになり、焼酎や日本酒と同じような感覚で手軽に購入できるようになりました。
日本ではここ数年、ワインの本場フランス、イタリアを抜いて、チリのワインが売り上げのトップになっています。チリワインの歴史は古く、16世紀スペインによる征服の際、布教のために渡った宣教師が葡萄(ぶどう)の苗を持ち込み、ミサで使用するために作り始めたといわれています。
19世紀に入ると実業家のシルベストーレ・オチャガビアがボルドーから苗を持ち込み、栽培に成功しました。他の実業家も後に続けとワイン造りに参入するようになり、今では世界的にも良質なワインの産地となっています。
「安価」というと、ついつい粗悪な品を想像しやすいのですが、チリ産のワインが価格を抑えられるのは人件費が安く、良質な葡萄の栽培と醸造が低価格で行えること、日本へ輸出する際の関税が安いためであって、決して品質に問題があるわけではありません。
チリ産だけでなく、最近は日本でもワインの生産を行う酒造会社も増え、国産の「安価」で美味しいワインも多く流通し、よりカジュアルなお酒になってきました。
「安価」なファッション
ファッション雑誌をめくると、最近ではユニクロや無印良品などの「ファストファッション」が紙面を賑わせています。
以前はファッションリーダーというと、高級なブランド品を着こなす人というイメージでしたが、最近では「安価」でも上質なアイテムを活用し、自分らしさを上手にアピールできる人へとシフトチェンジしてきました。
憧れのファッションモデルが、「安価」なファッションアイテムを素敵に着こなしている姿は、「これのアイテムなら手軽に購入できるから、自分もやってみよう」というアクションへとつながりやすいため、お財布にも優しい「安価」なファッションの人気はより高まっていくでしょう。
「安価」なエスニック雑貨
他の人とは少し変わったファッションをしたい、またはインテリアのアクセントが欲しい時に便利なのが「安価」なエスニック雑貨です。
デフォルメされた動物や花の大胆な柄が、インド綿に染め上げられた異国情緒漂う雑貨や洋服、天然石のビーズや手の込んだ細かい銀細工のアクセサリーは、物価の安い国で製造されているため手軽に購入できる「安価」なものばかりです。
完璧さを求める日本製の品物とは違い、どの商品も手仕事ゆえに仕上がり具合がまちまちですが、その緩さこそがエスニック雑貨の魅力とも言えます。
物によっては購入後に雑な仕上がりに気づき、少々残念な気持ちになることもありますが、「安価」だから仕方がないと諦めがつきます。
ネットスラングとしての「安価」
おしまいに、従来の用法とはまったく異なる「安価」の使い方をご紹介しておきます。
巨大匿名掲示板「2ちゃんねる(2017年より「5ちゃんねる」と改称)」を中心に、ネット世界では「安価」と書いて「アンカー」を意味するのが半ば常識になっています。「アンカー」とは「>>」のような記号で表されるリンクです。BBSなどで「>>20」のように記載すると、それをクリックすれば20番目の書き込みにジャンプできるわけです。
また一部では、「アンカースレ」なるものも流行しています。こちらは、例えば「コンビニでアイスを買ってくる。>>100」などと前もって書き込んでおき、100番目の書き込みをすることになった人が指示を実行しなくてはならないという、一種の遊び、ネタスレです。
「安価」に「アンカー」の意味を持たせるのはもちろん音の響きから来る置き換えで、ネットスラングでは頻繁に見かけるものです。