「分水嶺」とは?
「分水嶺」①地理学で使う言葉
「分水嶺(ぶんすいれい)」とは、地理学に関する言葉です。「分水嶺」に似た言葉に「分水界」があります。「分水界」も地理用語で、異なる水系の境目を指します。
「分水界」を理解するには、川の流域をイメージするとわかりやすいかもしれません。関東の武蔵野台地を流れる川は大きく多摩川水系と荒川水系に分かれますが、この二つの水系を分けるところが「分水界」というわけです。
日本では、山の稜線と「分水界」が一致していることが多くあります。例えば、本州の山脈に降った雨は、日本海側と太平洋側に分かれて川となって流れていきますね。この、分水界となっている山頂と山頂をつなぐ峰すじのことを「分水嶺」といいます。
「分水嶺」②分かれ目
「分水嶺」の二つ目の意味は、物事がどうなるのか、方向性が決まる分かれ目ということです。
「分水嶺」が、地表に降った水が、複数の水系に分かれる境界となっているところという意味を持っているところから、物事における分かれ目を指す言葉として使われます。
地理用語である「分水嶺」よりもこちらの意味の方が、一般的にはよく使われています。
「分水嶺」の使い方
「分水嶺」は、分水界としての意味で使う場合も、物事の分かれ目という意味で使う場合も、「越える」という動詞とともに使われることが多いようです。その場合、「分水嶺を越える」のように使います。
「分水嶺となる」や「分水嶺だ」という使い方もよく見られます。
例文
- この山脈は、このあたりの東側と西側の水系を分ける分水嶺となっている。
- 分水嶺を越えると、そこには美しい景色が広がっていた。
- ここが成功と失敗を分ける分水嶺だ。気合を入れて取り組もう。
- 5年前の大胆な社内改革が、我が社を飛躍的に発展させる分水嶺となったことは間違いない。
- 分水嶺を越えた今、すべてを受け入れる覚悟を決めて、悪あがきはしないでおこう。
「分水嶺」の関連語
「分水嶺」の、「物事の方向性を決める分かれ目」という意味の関連語について見てみましょう。
分岐点
「分岐点(ぶんきてん)」には、道路や線路などが二つ以上の方向へ分かれることという意味とともに、物事がどうなるかを決める分かれ目という意味があります。
「分岐点」の「分岐」には、「分かれること・一つのもとから二つ以上に分かれていくこと」という意味があり、この場合の「点」には「特定の位置や場所」といった意味があります。
「分岐点」という言葉は、勝つか負けるかといった、両極にあるもののどちらかに分かれるといった場合に使われることが多いようです。
【例文】
- あのときの出来事は、間違いなく私にとっての分岐点となった。
- 何が分岐点となったのかは、後で振り返ってみるとわかることが多いように思う。
曲がり角
「曲がり角」は、道などで曲がっている角のところを指す言葉ですが、物事が進む方向の変わり目を表すたとえという意味もあり、文学作品など、一般的に幅広く使われている表現といえるでしょう。
【例文】
- 「人生の曲がり角」とはよく聞く表現だが、今の私はまさにその曲がり角に立っているように思う。
- これまで順調に進んできた事業だが、曲がり角にきていることをひしひしと感じている。
一転機
「一転機(いってんき)」とは、物事の大事な変わり目のことです。「いちてんき」とも言います。
似た表現である「転機」は、物事の状態が変わるきっかけを示します。「一転機」は物事の方向が変わる点、一つの大きな出来事を示すのに使われます。どちらも変化を示す言葉です。
【例文】
- 生死の境をさまよった体験が一転機となり、私の生き方はそれまでとはまったく違うものとなった。
- 初めて身近な存在を失ったことは、私の死生観の一転機となった。
「分水嶺」の英語表現
分水界という意味での「分水嶺」の英語表現として、divideを使うことができます。動詞のdivideは「分ける」「分かれる」という意味ですが、名詞は「分水嶺」を表します。
また、「分かれ目」という意味で「分水嶺」を英語で表す場合には、turning pointという表現を使うことができます。turningには「分岐点・曲がり角」という意味があり、pointには「ある時点・時期」という意味があります。
【例文】
- It is the divide between the eastern river and the western river.(これが東側の川と西側の川の分水嶺だ)
- A severe illness was a turning point in my life.(大病をしたことは私の人生にとって分岐点となった)