「靡く」とは
「靡く」(なびく)の意味は以下の3つです。
- 風や水流、波などの力に従って沿うように動く
- 1から転じて、威力や権力、意思などに(引き寄せられて)従う、屈する
- 1から転じて、異性から言い寄られて(従うように)相手を受け入れる
「靡かない」とする場合
上記2と3の意味は、「靡かない」と打ち消しの表現で使われることもあります。「簡単に靡かない」(言い寄られてもはねつける様子)、「権力者に靡かない」(権力のある相手に屈しない)などと用いると、相手にむやみに従わない様子や、強い意志が感じられます。
「靡く」の使い方
1.力に沿うように動く
1の意味の「靡く」は、草花や枝などの植物、旗などが風に揺れている様子、煙や髪などが空中に流れる様子に対して使います。水の動きによる海藻や水草の流れを表すこともできます。ただ「揺れる」「流れる」とするよりも、どこか趣のある雰囲気ですね。
【例文】
- チューリップが風に靡いて揺れている。
- 潮の満ち引きで、あちらこちらに海藻が靡いている。
- 彼女の長い髪が、優しい風に靡いている。
2.従う
2の意味での「靡く」は、強い者や権力者に従う様子を表します。相手の威力に圧倒される、魅力にひかれる、争いに負けるなど、従う動機はさまざまです。
【例文】
- 葵の御紋が入った印籠を見た途端、悪代官の家来達は水戸光圀公に靡くようになる。
- 相手の威光を目にして、いったん靡くのが得策と感じた。
- 彼はどちらにつこうか迷ったようだが、結局主流派に靡いた。
3.言い寄られて相手を受け入れる
3の意味での「靡く」は、一般的に男性が女性に対して言い寄る場合に用います。その気がなかったのにも関わらず、相手から言い寄られて好意を受け入れたという意味合いです。
【例文】
- 二人の男性に誘われていたけれども、彼女はどちらに靡いたのかな?
- 友人から頼まれて参加したコンパで、出会った男性にアタックされ靡いてしまった。
- 性格も良くて仕事もできる、そんな彼に靡かない女性はいない。
「靡く」の類語
棚引く
「棚引く」(たなびく)とは、横に細長く空中に漂っている様子のことです。「棚引く」の「たな」は接頭語で、一面にといった意味合いです。「引く」は伸ばす、広げることを表しています。
雲や煙、霞、もやなどが薄く流れるようなイメージですね。「靡く」の1の意味に似ていますが、植物などには用いないことに留意しましょう。
【例文】
- 霞が棚引き、山の上にもやがかかっている。
- 展望台の向こうに雲が棚引いている。
長いものには巻かれろ(長いものには巻かれよ)
「長いものには巻かれろ」は、強い者には下手に逆らわず、おとなしく相手に従っている方が無難だということわざです。「長いものには巻かれよ」ともいいます。
「靡く」の2の意味と似ています。「長いものには巻かれろ」は処世術(しょせいじゅつ:上手に世渡りする方法)を表していて、計算高い印象を受けるかもしれませんね。
【例文】
- 口うるさい人に目をつけられるくらいなら、「長いものには巻かれろ」の精神で行った方がいいね。
- 会社務めの間は「長いものには巻かれよ」をモットーに行動するつもりです。
口説き落とす
「口説き落とす」は、異性に何度も言葉を尽くして、自分の思いに従わせるという意味において、「靡く」の3の意味と似ています。ただし、性別に関係なく使える点は「靡く」と異なります。
「口説く」からは、意中の人と結ばれたいという望みを叶えるため、積極的に話しかけている様子がうかがえます。「落とす」は相手を従わせることです。
【例文】
- ワイン講座で知り合った積極的な女性に口説き落とされた。
- 彼は口下手でも一途な気持ちが伝わったようで、とうとう彼女を口説き落とした。