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「長いものには巻かれろ」の意味
「長いものには巻かれろ」は、自分の手に負えないほど長いもの、すなわち権力や勢力が強い相手には、逆らわずに従っておけ、という意味です。
「長いもの」というのは、自分よりも勝っていると思われる絶対的な相手の例えです。たとえ自分の方が正しいと思っても、勝ち目のない相手には逆らっても無駄であり、ある程度従った方が賢明であるということです。
「長いものには巻かれろ」の使い方
「長いものには巻かれろ」の使い方を、例文と用例から見ていきましょう。
「長いものには巻かれろ」の例文
- 長いものには巻かれろで、ここは部長のおっしゃる通りにしておいたほうがいいだろう。
- 社長にどんなに理不尽なことを言われても、言葉をのみ込むしかない。家族を守るためには、長いものには巻かれろだ。
- 息子には「長いものには巻かれろ」なんて言いたくない。孤立しても信念を貫き、毅然とした態度をとってほしい。
「長いものには巻かれろ」の用例
夏目漱石の『吾輩は猫である』には以下のような一文があります。
また、坂口安吾の『風と光と二十の私と』には以下のような表現があります。
「長いものには巻かれろ」は、先述の例文と坂口安吾の『風と光と二十の私と』の用例のように、生き延びるための処世術として「仕方ない」とあきらめの心境を表す場合に使われます。一方、一番下の例文と夏目漱石の『吾輩は猫である』の用例のように、批判的な文脈で使われる場合もあります。
「長いものには巻かれろ」の由来
「長いものには巻かれろ」は、由来や出典が明確ではありません。しかし、鎌倉時代の仏教説話『宝物集』には、畜生道に関して以下のような記述があります。
これは、弱肉強食の世界の実情を表した一文だと見られます。また、安土桃山時代の『月庵酔醒記』にはこんな表現があります。
この表現の中の動詞を見てみると、「のまるる」「まかるる」と命令形が使われていません。「長いものには巻かれろ」という表現は、元はこれらの表現のように、事実を単純に説明するものだったと考えられているようです。
「長いものには巻かれろ」の類語・関連語
- 泣く子と地頭には勝たれぬ
また「長いものには巻かれろ」と同じように、「従う」という意味の四字熟語には以下のものがあります。
- 唯々諾々(いいだくだく)
- 付和雷同(ふわらいどう)
「長いものには巻かれろ」の英語表現
- It is no meddling with our betters.(目上と争うことはできない)
- Better bow than break.(突進するより屈服した方がいい)
「長いものには巻かれろ」の諸外国の表現
- 卵を石にぶつけるな(カンボジア)
- 王様が正午に「夜だ」と言ったら星を仰げ(イラン)
- 金持ちと争うな、角ある者をおさえるな(ブルガリア)
- 川が曲がれば、ワニも曲がるがよい(ブルキナファソ)
- 卵は石とは相撲をとらない(セネガル)
カンボジアでもセネガルでも「卵」と「石」が登場していますね。カンボジアのことわざでは「卵を石にぶつけても割れることなど分かっているのだから、あえてぶつけたりしない」と言っており、セネガルのことわざでは「自分より強いと分かっている者には逆らわない」と言っています。