「長いものには巻かれろ」とは?意味や使い方をご紹介

「長いものには巻かれろ」は、「長いものには巻かれよ」ともいい、現在のように文末が命令形になったのは江戸時代辺りからと言われています。「長いもの」とは一体何のことでしょうか。ここでは「長いものには巻かれろ」の意味や使い方をご紹介します。

目次

  1. 「長いものには巻かれろ」の意味
  2. 「長いものには巻かれろ」の使い方
  3. 「長いものには巻かれろ」の由来
  4. 「長いものには巻かれろ」の類語・関連語
  5. 「長いものには巻かれろ」の英語表現
  6. 「長いものには巻かれろ」の諸外国の表現

「長いものには巻かれろ」の意味

「長いものには巻かれろ」は、自分の手に負えないほど長いもの、すなわち権力や勢力が強い相手には、逆らわずに従っておけ、という意味です。

「長いもの」というのは、自分よりも勝っていると思われる絶対的な相手の例えです。たとえ自分の方が正しいと思っても、勝ち目のない相手には逆らっても無駄であり、ある程度従った方が賢明であるということです。

「長いものには巻かれろ」の使い方

「長いものには巻かれろ」の使い方を、例文と用例から見ていきましょう。

「長いものには巻かれろ」の例文

  • 長いものには巻かれろで、ここは部長のおっしゃる通りにしておいたほうがいいだろう。
  • 社長にどんなに理不尽なことを言われても、言葉をのみ込むしかない。家族を守るためには、長いものには巻かれろだ。
  • 息子には「長いものには巻かれろ」なんて言いたくない。孤立しても信念を貫き、毅然とした態度をとってほしい。

「長いものには巻かれろ」の用例

夏目漱石の『吾輩は猫である』には以下のような一文があります。
 

長いものには捲かれろ、強いものには折れろ、重いものには圧されろと、さうれろ尽くしでは気が利かんではないか。

また、坂口安吾の『風と光と二十の私と』には以下のような表現があります。
 
ぢゃ、君、と主任はいやらしい笑ひ方をして、君、ちょっと、出掛けて行って釈明してくれ給へ。長い物にはまかれろといふから、仕方がないさ、ヘッヘ、といふ。

「長いものには巻かれろ」は、先述の例文と坂口安吾の『風と光と二十の私と』の用例のように、生き延びるための処世術として「仕方ない」とあきらめの心境を表す場合に使われます。一方、一番下の例文と夏目漱石の『吾輩は猫である』の用例のように、批判的な文脈で使われる場合もあります

「長いものには巻かれろ」の由来

「長いものには巻かれろ」は、由来や出典が明確ではありません。しかし、鎌倉時代の仏教説話『宝物集』には、畜生道に関して以下のような記述があります。
 

長きは短きをのみ、大なるは小をくらふ

これは、弱肉強食の世界の実情を表した一文だと見られます。また、安土桃山時代の『月庵酔醒記』にはこんな表現があります。
 
大なるものにはのまるる なかきものにはまかるる

この表現の中の動詞を見てみると、「のまるる」「まかるる」と命令形が使われていません。「長いものには巻かれろ」という表現は、元はこれらの表現のように、事実を単純に説明するものだったと考えられているようです。

「長いものには巻かれろ」の類語・関連語

  • 泣く子と地頭には勝たれぬ
道理の通じない相手には、歯向かうことはできない、という意味です。地頭とは、鎌倉時代の荘園の管理人など、絶大な権力を持つ役人のことです。庶民が逆らえるような相手ではなく、一方の子どもも泣いて聞き分けがなくなってしまえば、何を言っても通用しません。そんな地頭と泣く子には勝ち目がない、ということです。

また「長いものには巻かれろ」と同じように、「従う」という意味の四字熟語には以下のものがあります。
  • 唯々諾々(いいだくだく)
人の言うことに、はいはいと言いなりに従うことを言います。権力に逆らわない、というよりも、主体性のない事を批判する場合に使われます。
  • 付和雷同(ふわらいどう)
他人の言葉にすぐ相槌を打ち、すぐに同調することを言います。しっかりした信念や考えがなく、人の意見に安易に従う場合に使われます。

「長いものには巻かれろ」の英語表現

  • It is no meddling with our betters.(目上と争うことはできない)
  • Better bow than break.(突進するより屈服した方がいい)

「長いものには巻かれろ」の諸外国の表現

  • 卵を石にぶつけるな(カンボジア)
  • 王様が正午に「夜だ」と言ったら星を仰げ(イラン)
  • 金持ちと争うな、角ある者をおさえるな(ブルガリア)
  • 川が曲がれば、ワニも曲がるがよい(ブルキナファソ)
  • 卵は石とは相撲をとらない(セネガル)

カンボジアでもセネガルでも「卵」と「石」が登場していますね。カンボジアのことわざでは「卵を石にぶつけても割れることなど分かっているのだから、あえてぶつけたりしない」と言っており、セネガルのことわざでは「自分より強いと分かっている者には逆らわない」と言っています。

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