「不備」とは?
「不備」(ふび)とは、「そなわらないこと」「十分にととのわないこと」という意味の言葉です。
「備」の字は、「あらかじめ用意する(例:準備)」や、「そなえつける(例:設備)」などの言葉に使われています。「不備」の場合は、「十分にととのう、そなわっている(例:備具)」の意味を「不」で打ち消している形と理解しましょう。
「不備」を別の言葉で言い換えれば、「(そこにあるべき何かが)足りていないこと、欠けていること」です。
「不備」の使い方
「不備」という言葉は、主に「不備がある/ない」「〇〇の不備」といった形で、幅広い対象物について「何かが足りていない、不完全、完璧ではない」という状態を表すために使うことができます。
例えば「書類の不備」であれば、記入漏れ、記入事項の誤り、書式違いなどの理由で、その書類が完成していない(あるべき形としてととのっていない)ことを示します。
自然のものは別として、社会や社会制度はあらかじめ「完成形」として世に存在するわけではありません。そのため、「対策の不備」「システムの不備」「法制度の不備」など、完璧ではないという意味の「不備」は社会のいたるところに見つけることができます。
使用上のポイント
「不備」を使う上でのポイントとして、具体的な問題個所を積極的には特定しないというニュアンスを押さえておきましょう。
「不備」は「問題」とイコールではありません。先に述べた通り、世の中のほとんどの物事は不完全・未成熟な状態で存在しており、人間は全知全能の存在ではありません。ゆえに、社会生活上、ある程度はその事実と向き合わなければならないシーンもあるのです。
「不備」はあくまでも「何かが足りていない、完全でない」と述べるに留まる語であり、「不備があった場合にどうするか」という具体的な言及は、他の文脈に委ねましょう。
例文
- 内容に不備がない限り、婚姻届や離婚届などの書類は受理したその日付に法的効力を発揮する。
- 救援が遅れたことについて、行政担当官は医療チームとの連絡体制に不備があったことを認めつつも、この小さな町の予算では解決が難しい問題だと弁明した。
- うちの会社は防災対策に力を入れている。先日も防火設備に不備がないか厳重にチェックしたよ。
「不備」の対義語「完備」
「不備」の対義語にあたるのは「完備」(かんび)であり、文字通り、「完全にそなわること、すっかりそろっていること」という意味です。
ただし現実には文字通り「一分の隙もなく完全にそなわっている」と言えるものは限られています。そのため実際の運用上は、「必要とされる機能・設備が用意されている」「他と比較して充実している」といった意味でも使用されますのでご注意ください。
また、他に「不備」の対義語的な言い回しとして、「完璧」「問題なし」「差し支えない」などの表現も併せて覚えておきましょう。
例文
- このマンションには身障者用のエレベーターが完備されており、実際に車椅子の居住者が多く入居しています。
- 新しい下宿先を探すにあたっては、「インターネット完備」が絶対条件だ。
- この小さな機械は、ガス検知計、高度計、地震計、赤外線温度計など、地震学者が必要とする機能を完備しています。
「不備」を英語で言うと
「不備」を英語で言いたい場合には、以下のような表現を用います。
- imperfection(不完全、不十分)
- incomplete(完全ではない)
- deficience(不足、欠陥)
- flaw(文書・手続きなどの欠陥)
なお、対義語的に「不備がない」と言いたい場合は、「nothing wrong」(何も悪いところはない)や「completeness」(完璧)などがよいでしょう。
例文
- We cannot issue a certificate due to incomplete procedures.(手続きに不備があるため、証明書を発行できません)
- If there are any deficiencies in my paperwork, please contact me.(もし私の書類に何か不備がありましたら、ご連絡ください)