「折しも」とは?
「折しも」は、ちょうどその時、折からという意味を持つ副詞です。「折」という漢字は、複数の意味を持ちます、「折しも」の「折」は、その中の「時節、その時、機会」という意味が該当します。
若干、古めかしい言葉と感じるのは、「折しも」の「し」と「も」がともに強めの助詞だからかもしれません。「奇しくも」「侘しくも」など「も」がつく言葉はありますが、「し」と「も」の助詞二重使いで、「まさに、ちょうど」という強調の程度がわかります。
「折しも」の使い方
「折る」「折り紙」などの「折」の読み方は「お」が多いため、「折しも」と表記する場合に「折りしも」と「り」を入れてしまいがちです。しかし、上記のような意味を持つ名詞「折」に「り」という送り仮名はつきません。迷ったときは、ひらがなで表記するのがいいでしょう。
強めの助詞「し」「も」を伴うのですから、「ちょうど、まさに」の前に「なんと」という言葉を入れたいくらいの状況で使いたいものです。
また、2つの出来事を並べる間に入れて、「ちょうどその時、よりによって」という意味になるケースがあります。その場合は、「~が、折しも~となってしまった」などと、前後の文章に不本意であるニュアンスを補うと分かりやすいでしょう。
「折しも」の文例
- 過去は忘れて前に進もうと決意したA子が家を出ると、折しも雨は上がり、青空には大きな虹がかかっているのだった。
- 入社式の日は、折しもB男の誕生日であり、彼の胸には新たな門出への夢と期待が膨らんだ。
- アイドルのB美は、帽子を深くかぶってカフェでお茶を楽しんでいたが、折しも隣のテーブルにファンの男子学生グループが座り、気づかれて大騒ぎになってしまった。
「折しも」の類語
「折から」の意味と使い方
「折から」は、①「ちょうど(まさに)その時」、②「~の時であるゆえ」などの意味を持つ副詞です。「折しも」の類語としては、①の意味が該当します。「折柄」と漢字で表記することもありますが、その場合、読み方が「おりがら」とならないように注意しましょう。
「折しも」と比べると、少々堅苦しい言い方になるとはいえ、会話で登場することもある言葉です。①の意味で用いる場合、「折からの」と「の」を付けることがあります。
②の意味の「折から」は、手紙文の最後に「~の折から、ご自愛ください」とセットで用いられることが多く、覚えておくと便利です。
【文例】
- 今日は多くの私立中学校で入試が行われたが、折からの雪で電車のダイヤが大幅に乱れた。(①の意味)
- 寒さ厳しい折から、くれぐれもご自愛くださいませ。(②の意味)
「折も折」の意味と使い方
「折も折」は、「折しも」とまったく同義の類語です。「ちょうど(まさに)その時」という意味の言い回しで、「折しも」の古めかしさに比べると、現代社会でもよく見聞きする言葉です。
「折しも」と同様に、「ちょうどその時」という意味でも、「よりによってその時」というニュアンスの意味でも用いることができ、後者の使い方は、やはり「折も折」を挟む前後の文章に、不本意であったことを感じさせる文脈にすることで成立します。
【文例】
- 残業中の課員が空腹を感じ始めた折も折、課長が大量のサンドイッチを差し入れてくれて、一挙にみんなのテンションが上がった。
- 人がこない受付仕事で思わず居眠を始めた折も折、もっとも重要な顧客が目の前に立った。