「疼く」とは?
「疼く」は(うずく)と読みます。「傷などが、ずきずき、ひりひりと痛む様子」、「悲しみなどのネガティブな感情により、心が強く痛むように感じること」の2つの意味があります。
身体と心の両方の痛みをカバーする表現ですが、身体の痛みのほうは、「ずきずき、ひりひり」とあるように、強烈なものではありません。骨折や大きな切り傷などの「大怪我」の痛みは、「疼く」どころではなく、「激痛」と表現すべきものです。
心を対象とした「疼く」も、「強い痛み」とはいえ、「筆舌に尽くしがたい」と表現するような、強い感情を表現するのには向きません。
「疼く」の使い方
身体対象の「疼く」の使い方
指先などをすっと切ってしまったとき、傷口が脈を打つように「ズキズキ」と痛んだり、軽く火傷した皮膚が「ヒリヒリ」と「疼く」感じは、誰しも経験があることでしょう。
手術のように身体のどこかを大きく切開したときは、術後しばらくは身動きもできないような「激痛」。何日かをへると、痛み止めに頼るほどではなくなりますが、傷口はまだジンジンと痛みます。それも「疼く」と表現できます。
「疼く」の主語は、「傷、傷口」そのものの場合と、「指」「歯」など不調をもつ部分の場合の双方があります。
- うっかりナイフで切ってしまった指先の傷が疼く。
- 一年前に手術した腹部の傷が、いまでも時々疼く。
- 奥歯が疼いて虫歯が出来ているとわかり、ようやく歯科医を訪れた。
- てんぷら油がはねて火傷をした手のひらが疼き、生活が不便でしかたない。
心対象の「疼く」の使い方
心に関する「疼く」を用いるのは、どちらかといえば、いま現在のネガティブな体験によって心が痛むと言うより、過去の苦しみを思い出して心が痛むような場合に用いられることが多いようです。
「辛い」「悲しい」「苦しい」など、心の痛みを表す言葉は多々ありますが、それぞれはっきりとした意味をもっています。
いっぽう「疼く」は、心がキリキリとするような痛みを表す言葉ではありますが、辛さ、苦しさ、切なさといった「限定された」意味をもちません。その曖昧さもあり、体験の臨場感が薄れた過去の傷の痛みを表現するのに適しているのです。
- 偶然、かつて心の中で離婚を決意したカフェの前を通りかかり、心の傷が疼いた。
- 自分の若さと未熟さで傷つけたかつての友のことを思い出すたび、心が疼く。
身体対象の「疼く」の英語
外国で病気になると不安なものです。医者に状態を説明する場合、せめて、「疼く」「痛い」などをその国の言葉で表現できれば、医師に痛みを訴えることはできますね。「疼く」は英語でなんと表現するのでしょうか。
ach: 痛む、ズキズキと疼く、などを表す動詞です。主語は人間ではなく、痛む場所となります。
【文例】My tooth aches all day long.(訳:歯が一日中ズキズキ痛んでいる。
aching: achの形容詞型を用いた言い回しを覚えておくと便利です。たとえば、aching pain in~(~のうずく痛み)は、~の部分に「肩(shoulder)」「胃(stomach)」などを入れると、「肩が疼く」「胃が疼く」という意味になります。
【文例】I have an aching pain in my lower abdomen.(下腹部が疼く)
smart: ヒリヒリする、しみる(ような痛み)などを表す動詞・名詞です。日本語となっている「スマート(賢い)」はお馴染みですが、「疼く」という意味もあるのは驚きですね。
【文例】Does this smart?(訳:ここはヒリヒリしますか?)